宇宙や天文に興味を持つきっかけは十人十色、まさに「星の数だけある」だろう。そんな様々な動機の一つに、「月や星(天体)の美しさに惹かれた」ということがある。オーロラや皆既日食のように、限られた場所で運良く出会える究極の天体ショーに憧れる人もいれば、帰宅途中で見上げた冬の星座や昇る満月など、身近な夜空に感動したという人もいる。
『世界の美しい夜空』は、世界の著名な写真家34人が撮影した「究極の夜空」の写真集。『ナショナルジオグラフィック』誌などで活躍する写真家ババク・タフレシ氏が選りすぐった約200枚の写真は、世界各地で撮影された傑作ばかり。存在感ある世界遺産の上に広がる満天の星、大気重力波の発光やスプライトなど眼視ではとらえにくい自然現象、灯台や夜景など人工の明かり、月虹や夜光雲など珍しい風景。多彩な地球の夜空を大判の紙面に再現し、私たちに届けてくれる。
一方、『宇宙のことば』はNASAや国立天文台などが撮影した天体写真を載せた本だ。こちらは偉人が語った言葉が主役になっている。パープルに光る星雲の写真にそえられた言葉「私が畏敬の念を抱くものはこの世に2つ。満天の空と自分の中にある宇宙だ」。渦を巻く木星の隣に書かれた言葉「自分たちが知っていることを知っているとみとめ、知らないことを知らないとみとめること。それこそが真の知識というものだ」。それぞれ、誰の言葉かわかるだろうか(万人が知っている人物)。では、「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」なら、きっとすぐにわかるはず。この言葉は、「宇宙から見た地球と月」の写真とともに紹介されている。いずれの言葉も、私たちに勇気と想像力を与えてくれる。大切な人への贈り物にもなる一冊。
『世界一美しい星空の教科書』は、プラネタリウム・クリエーターの大平貴之氏による、初のビジュアル星座入門本。一般的な星座解説書と違うのは、リアルな星空を追究してきた彼ならではの「画像の美しさ」だ。プラネタリウム番組を鑑賞するように、ページをめくるごとに季節も場所も様々な美しい星空が登場する。なかでも、地上の花と星を一緒に収めた幻想的な星景写真は、宮坂雅博氏と小松由利江氏の独特な撮影法によるもので、大平氏のプラネタリウム世界を引き立てている。書籍の後半では、12星座や季節を代表する星座について図解入りで説明しており、解説書の役割もしっかり果たしている。
最後の2冊は「身近な夜空」の代表である月をテーマにしたビジュアルブック。『月の教室』は、『世界でいちばん素敵な教室』シリーズの第19弾。見開きのページに1枚の月写真を掲載し、そこに月にまつわる素朴な疑問(Q)と、シンプルでわかりやすい答え(A)を載せる。次の見開きで、親しみやすいイラストや図を用いて、もう少し詳しく説明する。読みがなが振られているので児童から読めて、天文初心者も理解できるようにわかりやすく書かれている。挿入されたコラム「月と言葉」「月とことわざ」や、絶景物語(北海道・静岡・中国・カナダの伝説)も面白い。
『月と暮らす。』は2011年に刊行された同書をベースに、いくつかの写真や図版を新しいものに差し替え、最新の情報に更新した新版。月を科学的に解説することはもちろん、古典文学や童歌に登場する月について絵画史料とともに掘り下げたり、各国の国旗や伝説を取り上げたりと、月を多角的に紹介している。「雪月花」や「鏡花水月」の言葉のように純粋に愛でることもあれば、満ち欠けを人生の栄枯盛衰にたとえたり、月が狂気をもたらすと考えたり、まさに人が月とともに暮らしてきたことがわかる。最近は、ブルームーンやスーパームーンなどカタカナで呼ばれる月をよく耳にするが、それもまた今どきの人たちの「月との暮らし方」だろう。
(紹介:原智子)