どんなものでも“名前”が付くと、区別できたり個性を感じたりする。野原の雑草として注目しなかった植物が「ぺんぺん草」と呼ばれると、「聞いたことある!」とか「なぜ『ペンペン』なんだ?」とか「鳴らす方法があったはず」など、人によって様々なことを思う。さらに「正式にはナズナであり、春の七草としてお粥に入れる」と聞いたら、さっきまで雑草だったものが野菜にすら見えてくる。
夜空に無数にある星も、それがどんな星座かわかるともっと楽しめる。『星と星座のひみつシリーズ』は小学校低学年から学べる写真絵本で、1ケースに『春の星と星座』『夏の星と星座』『秋の星と星座』『冬の星と星座』『星と星座の動き』の5冊が収まっている。単体でも買えるが、やはりセットで読みたい。季節の星と星座を紹介する4冊は、見開きに季節を代表する星の写真が示され、ページをめくると星座名・星座絵・星座線を教えてくれる。その後、覚えた星座が時間の経過によって移動していくことを紹介する。この“星の動き”についてじっくり解説したのが『星と星座の動き』だ。地球の公転や自転により、季節や時間(夕方・夜・朝)で見える星座が違うことを優しい色使いの絵で教えてくれる。ぜひ子供たちに「毎日の生活の中で星を見る(星座を探す)楽しみ」を感じてほしい。
同じ著者による『藤井 旭の 星座をさがそう』は、もう少し高学年向きの絵本。季節の星空を示した後、主な星座を見開きで紹介していく。なんといっても目を引くのは、ボーデの星図やパルディ天球図などの美しいグラフィック。アラビアやエジプトで描かれた珍しい星座絵も、眺めているだけでワクワクする。子供だけでなく、大人をも魅了する星座版の絵巻物語。
こんなふうに古今東西で親しまれてきた星座だが、その成り立ちについて専門的に解説するのが『星座の起源』だ。この本は2010年に相次いで刊行した『わかってきた 星座神話の起源 エジプト・ナイルの星座』と『わかってきた 星座神話の起源 古代メソポタミアの星座』を再編し、1冊にまとめた新版。新収録として著者の近藤二郎氏と天文民俗学を研究する出雲晶子氏の「対談 古代オリエントの星座を求めて」を掲載している。ギリシア神話よりもずっと古い時代の両地域で生まれた宇宙観から、やがて科学的な天文学へ発展していく過程がとても興味深い。
最後に紹介する『宇宙考古学の冒険』は、「宇宙の考古学」ではなく「宇宙から遺跡を発見する学問」の本。衛星画像データを分析して地中を調査する最先端技術だ。宇宙開発が人類の歴史を明らかにするのに役立ち、遺跡からの発掘品で先述したような古代星座の歴史をひも解くこともできると考えると面白い。ちなみに、著者はエジプト考古学者。
(紹介:原智子)