Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

星ナビ2022年5月号掲載
ワクワクする宇宙 ときめく星空

日本で暮らす私たちにとって、春は「始まりの季節」と感じる。本来なら、ワクワクして新しいことを始めたり未知の場所へ出かけたくなったりするが、新型コロナウイルス感染症が流行してからは人との交流も旅行も消極的にならざるを得ない。せめて「宇宙へのワクワク」や「美しい星空へのときめき」は忘れたくない、そんな気持ちで選んだのが今回の7冊である。

『るるぶ宇宙』は発売当時とても話題になったので、すでに購入した人も多いのでは。国際宇宙ステーションの歴史・現地の様子・行程・食事・生活といった案内が『るるぶ』目線で紹介され、旅行前のワクワクを思い出させてくれる。将来の月面都市計画や火星有人着陸など、未来へのワクワクも満載。「すぐ役立つ」コーナーでは、JAXA関連施設や代表的な科学館・プラネタリウムを案内。……といろいろ書いたが、やっぱり一番のインパクトは「表紙」だろう。コロナ禍の事情があるにせよ「るるぶから『宇宙』が出る時代になったんだ」と感慨にふけることしばし。

『夢の宇宙旅行 完全ガイド』も同ジャンルだが、こちらは民間宇宙旅行の内容や費用を具体的に比較しながら紹介していく。高度100km程度の宇宙空間に行く「サブオービタル飛行」プランなら、現実的な金額で地球を眺めたり無重力を体験したりできる。かつて地球一周や南極に行くことが一部の人に限られていた時代を思うと、「宇宙も行き先の選択肢の一つだ」と実感する。

宇宙に飛び出す旅費も勇気もない私は、地上から星空を眺めて美しさにときめくだけでも満足だ。『星空の楽しみかた』はKAGAYA氏の最新本で、星空や天体の魅力とそれを引き出す撮影方法を教えてくれる。実際に彼が撮った多くの写真を用いて、「身近にこんなときめく瞬間がある」ことに気づかせてくれる。

次の2冊も、星空撮影のハウツー本。『魅せる星空撮影術』は自然の中や街中での撮影方法、天の川・月・天体など対象別の撮影方法をわかりやすく解説する。「ウユニ塩湖のように」とか「桜と」とか具体例を挙げながら撮影術を示してくれるので、初心者でもチャレンジできそうだ。レタッチ作業の加工指導も心強い。

『星空撮影塾 決定版』は2018年に発刊した『星空撮影塾』の続編で、初心者のみならず中級上級者まで対象にした内容になっている。撮影準備から基本的テクニック、画像処理やタイムラプス撮影など最新情報も図解でわかりやすく説明。もっと深く知りたいときは、要所要所に掲載された二次元バーコードから著者のYouTubeチャンネルを見に行けるので、動画で確認もできる。

次の2冊は、人気書籍を文庫化したもの。『ときめく星空図鑑』は、2012年発刊の同名タイトルの単行本を再編集した「ときめく図鑑Pokke!」シリーズ。プラネタリウムの人気解説員と、アストロアーツに在籍している天文学史研究者による星空案内は、読む者を優しく星空へ導いてくれる。まさにポケットに入れて、いつでも夜空を見上げたくなる本。

『面白くて眠れなくなる天文学』は2016年発刊の同名タイトルの単行本に、番外編の2項目を書き下ろした文庫。新章の「月・火星への人類の挑戦」では、「月と人類の新時代−アポロとアルテミス」「探査が進む火星−人類はなぜ火星を目指すのか?」を紹介している。著者の国立天文台准教授が自ら「こんなワクワク、ドキドキする学問を、天文学者たちに独占させておくのはもったいない」と書いているとおり、たしかに天文学は眠れなくなるほどエキサイティングな世界だ。

(紹介:原智子)