短い梅雨の後に猛暑がやってきたと思ったら、戻り梅雨の豪雨に襲われる。めまぐるしく変わる日本の気候を実感する日々だ。変化に富んだ四季の移ろいは、日本人にとって良くも悪くも“自然への関心”を刻み込んできた。星空への関心も高まる季節、夜空を見上げて四季を感じよう。
『星三百六十五夜(春・夏)(秋・冬)』は、野尻抱影氏が敗戦後の虚脱感から星空に救いを求めて日夜書き続けたという随筆集。1955年に出した原著に、1960年と1969年に本人が添削加筆し新稿を入れ替えた。今回発刊された単行本2冊は、1978年初版(2002年・2003年改版)の文庫4冊を合本したもの。「解説」として渡部潤一氏が、同書について、また野尻氏の功績や日本人と星の関わりについて、寄稿している。夜空の暗さや生活様式が変わっても、星と親しみたい心は変わらないと感じる名作。
『小さな星の本』は天文学・文学・芸術など様々なアプローチから、星への好奇心をくすぐる「小さな本シリーズ」。四季の星座・世界と日本の星空絶景写真・天体解説・月の呼び名・文学作品(宮沢賢治・中原中也・萩原朔太郎ほか)・星や月にまつわる言葉・世界と日本の名画(ゴッホ・ミュシャ・太田聴雨ほか)が掲載されている。星空への憧れが詰まったビジュアルブック。
ここまで紹介した本で“星空への関心”が高まったら、いよいよ「実際に天体の観察をしたい!」と思うのでは。まずは、小学生以上を対象にした『星空教室(春の星座)(夏の星座)(秋の星座)(冬の星座)』。表紙は丈夫なハードカバーで、絵本のように見やすい大判。本文にはふりがなが振られて、低学年の子供でも読める。そして、小さな手でもページをめくりやすい、しなやかで発色のきれいなコート紙。夜空の下に持ち出して、何度も星空観察に使える安心の装丁だ。実はこれまで長らく当コーナーを担当してきて、多くの書籍に触れページをめくり「その本が制作意図(内容・対象者・目的)に適した造り(表紙や本文の紙質・サイズ感・雰囲気)なのか」を感じてきた。ときおり「違う装丁の方が合うのでは」と思うこともあった。この本は期待を裏切らない造りで、内容も子供にとって必要かつ充分だ。四季ごとの星座解説のほかに、「春」には星の基本情報、「夏」には日周・年周運動、「秋」には月について、「冬」には太陽について、それぞれ解説されている。ぜひ4巻セットでそろえたい。
次の2冊は、星ナビ編集部が制作したムック。『スマホで楽しむ星座入門』は、2011年に発刊した『DVDでかんたんに「プラネタリウム」が楽しめる星座入門』の改訂版。本文と図版を改訂および再編集し、付録DVDを一新。そして一番の特徴は、星図アプリ「星空ナビ」との連動だ。星座紹介ページの二次元コードをスマートフォンで読みとると「星空ナビ」の星座カードが表示され、「空でさがす」ボタンを押せば端末の方位センサーと連動しながら矢印で星座の場所を教えてくれる。これでもう、いつでもどこでも星座探しができる。
『星のギリシア神話』は、表紙を見ただけでも「懐かしい!」と思う読者が多いのでは。星ナビ2000年12月から2004年12月号まで計49回連載された藤井龍二氏の「ギリシア神話劇場」をまとめ、2005年に発刊。今回の新版には、描き下ろしの「ニューワールド 南天の星I・II」と「南天の新設星座たち」計16ページが追加されている。初見派も再読派も、この機会に楽しく読んで、神話を学ぼう。
(紹介:原智子)