Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

星ナビ2023年2月号掲載
今年はどの星を見ようか、撮ろうか

皆さんにとって2022年は、どんな天文活動の年だっただろうか。筆者にとって昨年は、かなりエキサイティングな年だった。なぜなら、長引くコロナ禍で(高齢の同居者がいるため)混雑する場所を避け続けて生活していたのに、5月になんと海外まで遠征してヘルクレス座τ(タウ)流星群の出現を観測するという、緊張と興奮の体験をしたからだ。2023年はどんな天文現象があり、どんな体験ができるのか、きっと楽しみにしている人も多いことだろう。

そんなときに頼りになるのが『アストロガイド 星空年鑑 2023』だ。すでに購入した読者も多いと思うが、当誌を編集しているアストロアーツが手掛けた星空ガイドムック。オールカラーの大判誌面は、初心者でもわかりやすい星空案内と図解がたっぷり。付録のDVD-VIDEO/ROMには、オンライン動画としても楽しむことができる「プラネタリウム番組」4番組と、「アストロガイドブラウザ2023」などのソフトウェアが収録されている。ユーザー登録すれば「アストロガイド天文現象画像パック2023」と「アストロガイド天文現象カレンダー2023」をダウンロードして使用できる特典もある。

さあ、見たい天文現象にワクワクしてきたら『天文手帳 2023年版』に自分のスケジュールも控えておこう。もしかしたら4月20日を中心に「インドネシアで金環皆既日食の観測」と書き込む人もいるかもしれない。そこまで遠出しなくても、日々の暮らしの中で星空と過ごす人のポケットに入れておきたい一冊。なんでもデジタル管理するのが盛んな時代だが、小さな手帳のページをめくりながら「夜空を移りゆく天体の移動図」や「惑星接近などの星図」を眺めることは、アナログらしい連続する時の流れを感じさせてくれる。まさに宇宙(空間と時間)が詰まったハンドブック。

そして、『天体観測記録集』は一人のアマチュア天文家が観測した1968年から2020年(一部2021年)までの記録が詰まったアーカイブ。50年以上におよぶデータは、天文現象の過去資料であると同時に、著者の人生の記録でもある。そんな大先輩が残した天体スケッチや手書きメモ、フィルムで撮影された写真は、これから天体観測を始める初心者にとって良き見本であり、指針にもなるだろう。

この本を見て「自分も本格的に天体観測をしたい」と思った人にお勧めなのが、『天文アマチュアのための 屈折望遠鏡光学入門』『同 反射望遠鏡光学入門』だ。いずれも2005年に発行された同書の復刻版。光学系の研究で優れた業績を残し2015年に102歳で亡くなった著者の知識が詰まった解説書。『屈折望遠鏡光学入門』は屈折望遠鏡の歴史、各種光学機器の基礎、材料や対物レンズと接眼鏡の知識、カタディオプトリック系について解説している。『反射望遠鏡光学入門』は反射望遠鏡の歴史と種類、鏡材や収差の知識、シュミットカメラ・マクストフ系・シュミットカセグレン・リッチークレチアン・巨大望遠鏡について解説している。著者は「この本にヒントを得て、新しい着想が浮かぶように、私は心から期待しています」と序につづる。

天体写真派には『星空写真 撮影ハンドブック』をお勧めしよう。星空撮影のプロが、必要な機材から構図・露出などの知識、シチュエーション別の定番設定や撮影技術を丁寧に教えてくれる。さらに、比較明合成や加算平均、タイムラプス動画など複数写真を合成するテクニックまで導いてくれる。著者が撮影した素晴らしい見本写真に具体的なデータが添えられているので、「こんな感じの写真を撮りたい」と思ったら、まずはその通りにやってみよう。撮影現場に持ち込めるミニサイズで、丈夫な紙質のマニュアル本。

(紹介:原智子)