国際宇宙ステーションが宵や未明の空で通過するのを見ると「あそこに宇宙飛行士がいて任務を果たしているんだ」と感動し、日本人が搭乗しているとわかると親しみすらわく。一方で、スターリンク衛星が数珠つなぎになって移動するのを見ると「あんなにもたくさんの人工物が地球の近くを飛んでいるのか」とあらためて驚嘆する。宇宙での天体観測や商業利用が盛んになる現在、たまには少し立ち止まって宇宙開発について考えてみよう。
『宇宙開発をみんなで議論しよう』では、宇宙開発のあり方について“市民が考え、議論に参加する”ことが大切だという。すべての科学技術は私たちの生活にとって好ましいものばかりとは限らず、良くも悪くも様々な影響を受ける。宇宙の利用や開発も「国家や企業にお任せ」ではなく、市民(私たち)が主体的に考え議論に関わることが必要である。そんなときに、問題点を整理し判断するための手がかりを教えてくれるのがこの本だ。
そして、ものごとを理解するために欠かせないのが、それがどのように行われてきたかを知ることだ。『宇宙大航海時代』は宇宙開発のこれまでの歩みと今後の展望について、現場の研究者たちが執筆した報告書である。15〜17世紀の大航海時代(地理上の発見)と対比しながら、現在の宇宙開発を見ていくのがポイント。JAXAが2018年から2021年まで12回開催した「宇宙大航海時代検討委員会」の内容をもとに、一般向けの書籍としてまとめた読み物。
JAXAでは高度な専門情報を発信するだけでなく、子どもたちにもわかりやすく航空や宇宙にまつわる科学を伝えている。『宇宙をめざせ!科学実験大図鑑』は、児童におなじみのキャラクター「かいけつゾロリ」といっしょに、身近な道具を使って科学の面白さを学ぶ実験集。夏休みの自由研究にも使えるので、ぜひ実際にやってみよう。
ところで、太陽系の天体や探査機の軌道は、微積分を用いれば基本的な情報を得ることができる。『惑星探査とやさしい微積分I・II』は、A.J. Hahn氏による教科書を2分冊で著した邦訳本。I巻(1章〜4章)では天体軌道の理解と探査の歴史、極座標系を用いた関数の微積分、中心力による運動と軌道を紹介。II巻(5章・6章)では楕円軌道や双曲線軌道の運動について解説し、ボイジャーなど宇宙機の軌道やターゲット天体へ誘導する複雑な局面について論じている。
『宇宙ビジネス最前線』はタイトル通り、宇宙を舞台にした多彩なビジネスシーンを紹介するムック。ロケット製造など従来の宇宙機器産業だけでなく、衛星データ提供などの宇宙利用産業、さらに宇宙保険や宇宙旅行といった新サービスまで、具体的な事例を掲載している。先述したように「私たちの生活にどんな変化や影響があるか」と考えながら読むと、いっそう実感がわくだろう。
そんな宇宙ビジネスの中でも、すでにニュースで見聞きしたことがあるのが「中小の企業や大学の研究室が作った衛星をロケットに乗せて打ち上げる」というものだ。『あなたの超小型衛星を作ってみませんか?』では、宇宙システムの概論から惑星探査計画の立案、各種制御方法、発射関連装置など、必要な知識を具体的に解説し、最終的に「超小型衛星の製作」を教えてくれる。超小型衛星の製作や利用は、日本に限らず「これから宇宙利用を目指す国や地域」にとっても可能性を感じる。
(紹介:原智子)