重厚な大判の図鑑を手に取ると、まさに「知識が詰まっている」と感じてワクワクする。そして、ページをめくり鮮やかな写真や興味深い図解が現れると、「まだまだ知らない世界がいっぱいある」と探究心をそそられる。そんな図鑑のなかから、変わった切り口で編集されたものを2冊紹介しよう。
『EARTH 図鑑 地球科学の世界』は「地球」という天体で起こっている様々な現象を、天文学・地質学・気象学・生物学の観点からまるごと紹介したもの。地中で誕生するカラフルな鉱物、すさまじいエネルギーで活動する火山やプレート、循環する海洋とそこで暮らす生物たち、大気の中で起こるオーロラや様々な風雨、地球直径0.2%にも満たない生物圏で育まれた太古から続く命の足跡。こんなにも複雑で多様なモノ(無機物・有機物)をはらんでいる地球に、あらためて感動する。
『小惑星・隕石 46億年の石』は彗星や天体衝突もふくめて、小惑星と隕石に特化したビジュアル本。探査機「はやぶさ」と「はやぶさ2」の活躍が知れわたって以来、「小惑星」という言葉もメジャーになったと感じる。いまこそ、この本で小惑星とは何なのかしっかり学びたい。小学校高学年を対象にしているので、やや大きめの文字でわかりやすく書いてあり、天文初心者にも理解しやすい。また、最新情報はもちろん各所におりこまれたミニ情報や、日本と世界の「古い記録と伝承」も面白い。親子で一緒に読んだら、それぞれ違うポイントで「へー」と思うかもしれない。星ナビ読者にとって見逃せないポイントは、監修者が「はやぶさ」「はやぶさ2」を率いた吉川真氏と、昨年末に亡くなった藤井旭氏であること。藤井氏が撮影した彗星の美しい姿とフィルム写真の味わいを鑑賞しながら氏を偲びたい。
さて、ここからはもう少しなじみやすい図鑑を紹介する。まずは、知のビジュアル大百科シリーズの『宇宙』。世界32か国で発行され累計550万部を誇るイギリスの版元DK社による最新宇宙図鑑。太陽系や銀河など基本的な情報から、宇宙探査というホットな話題まで、全文ふりがな付きで解説。後半では、明るい星を目印にスターホッピングで星空観望する方法も紹介。子どものいる家庭で「最初の宇宙図鑑」として用意するのに最適な1冊。
一方『夜空をおもいっきり楽しむ図鑑』は、身近な場所で夜空を見るときに役に立つハンドブック。流れ星や日食・月食などの天体ショーを楽しむポイントや、月や星を見るハウツーを紹介。こちらも全文ふりがな付きで、星空観察の最初の一歩にお勧め。
『住みたくない星ずかん』もハンディーサイズで全文ふりがな付きだが、楽しいイラストと文章で宇宙の謎を教えてくれる読み物。「地球を家出」した少年が火星から来た不動産会社の宇宙人と移住物件を探していろいろな星をめぐる。「どの星が住みやすいか」という視点で天体を学べるのがユニークだ。「住みたくない星ランキング」と「住んでみたい星ランキング」は必見!?最後に宇宙人が「気に入った星はありました?」とたずねた質問に少年が答えた言葉は何だったのか、ぜひ自分でお確かめを。
天文ファンのなかには、地学の延長として鉱物に関心を持つ人も多い。様々な特徴を備えた鉱物の魅力の一つに、個性的な色がある。『地球にじいろ図鑑』は鉱物を日本の伝統色で分類し、同じ色を持つ植物と動物をあわせて掲載するという斬新な図鑑。筆者の誕生石である鉄礬柘榴石(てつばんざくろいし)の色は錆朱(さびしゅ)で、同色鳥はベニスズメ。類似する苦礬柘榴石(くばんざくろいし)の場合は、臙脂色(えんじいろ)でオオマシコ。地球が生んだ鉱物の多様性と、日本語の繊細な表現に感心することしきり。
(紹介:原智子)