今回の1品目は、「ルネッタ」というお菓子。イタリアの伝統的な発酵菓子である「パンドーロ」の生地を三日月型にして焼いたもの。ルネッタ(Lunetta)とは、イタリア語の「Luna」(月)に「-etta」という指小辞がついた言葉で、「かわいいお月様」といったような意味である。
ヨーロッパなどでは、伝統的なパンに、もともと果物などに生殖していた野生のイースト(酵母)やバクテリアが使われていたという歴史がある。
月とバクテリアといえば、実はNASAでは、月面でロケットの燃料や肥料をつくるために、バクテリアの一種を使った研究を進めている。なんともSFっぽい話だが、温泉から採取したシアノバクテリアが、月面と同じような成分の砂の中で育つ(*)ことが確認された(*空気、水、光のある環境下)。さらに、このバクテリアを利用して、月面で酸素や水素ガス、さらに鉄などを得ることもできるらしいのだ。
たとえば、月に存在する資源の1つ、イルメナイトという物質は、チタンと酸素が結びついた鉱物である。このイルメナイトから酸素を取り出すには、一般的に水素や炭素を加えて900度くらいの温度で熱するという方法がある。しかし、人工的に大量のエネルギーを加えなくても、このバクテリアが太陽光をエネルギーにしてつくった酸で、鉱物を分解することができる。
また、シアノバクテリアを他のバクテリアが分解すれば、栄養豊富な肥料ができ、ロケットの燃料となるメタンもつくられるのだ。(この実験に関するリリースは、NewScientistのWEB版「Hardy Earth bacteria can grow in lunar soil」の発表を参照のこと)
さて、話をルネッタに戻そう。肝心の味だが、卵をたっぷり使った黄色いスポンジ生地は、やわらかくて口どけもいい。甘すぎないので毎日食べても飽きがこない味だ。皿の上にのった姿は、なんともかわいらしい。
ルネッタはDONQ(ドンク)というパン屋さんのネット販売「DONQ YAHOO!店」か、系列店ドミニク・ジュラン(Dominique Geulin)で購入することができる。将来、建設される月面基地を想像しながら、ぜひ食べてみて欲しい。
さて、続く2つ品目は、新潟県燕市にあるお菓子処米納津屋さんの「雲がくれ」。
外側は、卵白に氷砂糖を加えた白色みぞれ。一口たべると、ふわふわとマシュマロのように、口のなかで溶けてゆく。そして、白色みぞれの中心から、月に見立てた黄身餡が顔を出す。
雲がくれの包装紙には、紫式部の歌が書かれている。
めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬまに 雲がくれにし 夜半の月かげ
(幼友達に)久しぶりに会えたのに、あなただと判るか判らない間に、あわただしく帰ってしまった。 まるで夜半の月がたちまち雲に隠れてしまうみたいに…という意味だ。まもなく梅雨のシーズン到来で、夜半のみならず、月が雲に隠されてしまうことも多い。
「雲がくれ」は、全国菓子博で金賞と栄誉大賞を受賞しており、全国から注文がくるほどの人気の品。これからの梅雨の季節、暑い季節にも、冷蔵庫で冷やして上品な味を楽しんでみて!