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天文雑誌『星ナビ』連載中「新天体発見情報」

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096(2013年1〜3月)

2013年8月5日発売「星ナビ」2013年9月号に掲載

超新星2013C in PGC 33561

年が明けた2013年1月1日朝になって、年末に東京の佐藤英貴氏から送られてきた「最近の彗星」の画像について『明けましておめでとうございます。遅くなりましたが、画像をいただきました。お礼申し上げます。見失われた彗星の件ですが、たいていの彗星は生き残っているようです。そのうち、もっとびっくりするようなものが見つかるでしょう。ただ私は、メイヤーやワトソンのようにNEOCPの確認観測や、過去の画像データをチェックしていませんので、私が見つける可能性は低いですね。29P/SW1は、私もオークリッジとマウント・ホプキンスで1980年代に写真(=プレート、ホプキンスはすでにCCDであった)で観測しました。オークリッジは1.55m、ホプキンスは1.0mの大きな望遠鏡での観測ですので、デジタル処理した画像では、バースト後の渦巻き構造がみごとでした。いただいた画像では、同じような構造が見えますが、この彗星の自転軸の方向は今も同じようですね。歳差運動が長いのでしょうか。ただ、これだけ大きなバーストを起こしても非重力効果が見られませんので、彗星が重いのか、ホンのいっときのバーストで推力がつかないのでしょう。なお、彗星会議でこれらの画像を紹介したことがありますので、蓮尾さんは私の画像を見ていますね。画像が見つかったらお送りします。129Pはかわいいですね。そうですか。C/2012 T5はダメですか……』というお礼を返しておきました。

さらに1月4日朝には、年末にたくさんの便り(観測)が届いていた栗原の高橋俊幸氏にも『明けまして、おめでとうございます。昨年は、多くの観測を送っていただきありがとうございました。今年もどうぞよろしくお願いします。年末からたくさんのお便りを書いていただきありがとうございます。時間があれば、ぜひ何かを書いていただければうれしいです。C/2012 F6とC/2012 K5は明るくなりましたね。うまく行けば、C/2012 F6は今年春に見えるかもしれません。C/2012 K5は、関氏が12月25日に6.9等、井狩氏が12月31日に6.8等と6等級で観測しています。C/2012 S1は15等級に入りましたか。もう少し増光すれば、眼視観測が行えるでしょう。C/2011 L4は1月に9等級と増光が多少鈍いのが気がかりですね』というお礼も返しておきました。その朝は、広島の坪井正紀氏から「明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。旧年中は、2個の超新星を発見することができました。おかげさまで、この3年間で通算8個となりコンスタントに成果を上げることができました。それもこれも、いつも中野さんが夜通し待機していただいて、私たち捜索者の支援をしていただいているおかげと感謝しております。いつまでもお元気で私たちを見守っていただければと、心から願っております。本年も、幸多き年になりますようお祈りいたします」というメイルが届いていました。

その日(1月4/5日)の明け方のことです。この日は、北海道の陸別町で-30.2゚を記録した寒い朝でした。当地も外気温が-0.9゚まで下がっていました。そのせいか、空はよく晴れていました。冬の長い夜が明けようとしていた05時49分に坪井氏から電話があります。氏は「おおぐま座にある系外銀河に超新星状天体(PSN)を発見しました」と話します。『送ってくれましたか』とたずねると「今、送ったところです」とのことです。メイル・フォルダーを見ると、氏からの報告は05時46分に届いていました。そこには「2013年1月5日早朝、03時37分に30cm f/5.3反射望遠鏡+CCDを使用して、40秒露光でおおぐま座にあるNGC 3516を撮影した捜索画像上の同一写野内にともに写っている系外銀河PCG 33561の中に16.5等の超新星状天体を発見しました。発見後1時間内に撮られた35枚の画像上にこの超新星の出現を確認しました。その間、移動はありません。また、この超新星は、2012年11月4日に行った捜索時にはまだ出現していません。また、DSS(Digital Sky Survey)にもその姿は見られません。超新星は銀河核から西に1."14、南に11".4離れた位置に出現しています」という報告がありました。氏の報告を見て『あれ……。赤経の離角が小数点以下2桁になっている。これは、赤経の秒(s)なのか』と思い、06時07分に坪井氏に電話で問い合わせました。氏は「調べます」とのことです。そして、06時15分に氏から「5".1のミスでした」と返答がありました。このチェックの後、氏の発見をダン(グリーン)に報告したのは06時36分のことでした。

それを見た坪井氏からは、07時35分に「未確認天体の確認ページ(TOCP)への登録ありがとうございました。今回のPSNは星雲に近く、捜索画像(20秒露光)で星雲の形が少しおかしいことに気づき、よく見るとわずかな星の分離がありました。さっそく40秒露光で確認すると、PSNが明確に確認できました。発見時刻もこの確認の時刻にしました。いつものことですが、早く確認されることを待つことにします。今回は位置のタイプミスなどあり、ご迷惑をおかけしました」というメイルが届きます。そこで、07時51分に『こんな寒い朝に捜索、ご苦労様です。当地の最低気温は-0.9゚でした。でも空はよく晴れています。ところで発見画像の件ですが、どこか使っているウェッブ・サイトがないのですか。そこに入れると確認者の参考になると思います。その場合、そのアドレスをお知らせください』というメイルを送りました。すると氏から08時48分に「発見画像の公開ですが、以前に直接開けないという連絡があったので、添付するようにしていました。今、使っている新たなサイトでは問題ないようなので、下記アドレスに今回のPSNを入れておきました。今後はこのサイトに入れるようにします」という連絡があり、このアドレスをダンに連絡しておきました。発見報告を見た山形の板垣公一氏からは、09時51分に「明けましておめでとうございます。NGC 3516の近くですね。正月に栃木でこの銀河は見ているはずです。まだ出現がなかったのか、見落としているのか。今度行ったら調べてみます。坪井さん、おめでとうございます。珍しく青空の山形から……」というお祝いが坪井氏に送られていました。

発見日の昼、12時53分には大崎の遊佐徹氏から「先ほどスペインにある32cm望遠鏡を遠隔操作して1月5日09時20分に15.9等で坪井さんのPSNを確認しました。確実に存在します。後ほど詳細を報告します」という確認報告が届きます。さらにその夜(1月6日)00時04分には、香取の野口敏秀氏から「今夜、23時07分に23cm望遠鏡で確認しました。光度は16.2等でした」という報告、さらにその早朝04時45分には、上尾の門田健一氏から「1月6日01時20分に16.1等と観測しました。こちらの機材では銀河中心から大きくは分離できませんでしたが、明瞭な恒星像が確認できます」という報告が入り、複数の地点で超新星の出現を確認できました。これらの報告は、他の確認観測も含め、1月6日08時16分にダンへ送っておきました。

なお、この超新星は、発見報告後、即座にスペクトル確認が美星や東広島の天文台、さらに国外の天文台で行われ、極大光度まで約1週間前のIa型の超新星の出現であることが報告され、1月7日15時13分到着のCBET 3375でその発見が公表されました。次の日の09時28分に新天体発見情報No.194を発行し、報道機関に送りました。それを見た坪井氏から10時10分に「正月早々お騒がせいたしました。前厄の私には良き厄払いになりました。確認をいただいた方々、スペクトル観測をしていただいた天文台の皆さんにも、あらためて感謝申し上げます。今年は大きな彗星がやってきますが、これも楽しみです。今年もいろんなことに首を突っ込みながら楽しみたいと思います。本年もよろしくお願いいたします」というメールが届きました。そして、19時50分に野口氏からは「新天体発見情報No.194を受領いたしました。いつも報告にご尽力いただきありがとうございます。坪井さん、SN 2013Cの発見、おめでとうございます。あっという間に9個目ですね。実は、元日の夜にこの場所を捜索していましたが、全く気づきませんでした」。そして20時54分には、遊佐氏から坪井氏に「新天体発見情報をありがとうございました。坪井さん、SN 2013Cの発見、おめでとうございます。お正月にメイルをいただき、今年もたくさんの発見を……と書いた翌夜の発見で驚いております。さらにたくさんの新天体発見をご祈念しております。みなさま、今年もどうぞよろしくお願いいたします」というお祝いが送られていました。

PANSTARRS彗星(2011 L4)が北上

2013年2月から3月にかけて南半球で明るく観測されていたPANSTARRS彗星(2011 L4)が、3月には北半球でもいよいよ観測可能になります。日本では、上尾の門田健一氏が3月8日夕刻にCCD全光度が2.5等で初めてとらえることに成功しました。氏は、さらに9日に2.2等と観測しています。氏によれば、眼視光度は1等級ほどと推測されるとのことでした。また、八束の安部裕史氏も3月10日にこの彗星をとらえています。スペインのゴンザレス氏も彗星の近日点通過直後の3月10日に彗星をとらえ、その光度を1.4等と観測しています。氏は、その後の彗星の光度を3月14日に1.8等、17日に2.2等、20日に2.7等と報告しています。

門田氏の観測は、3月10日00時49分に送られてきました。そこには「夕方の超低空(地平高度約+4゚)でC/2011 L4を観測できましたので報告致します。薄明の明るさを低減するために、Iバンドフィルターを使いました。彗星しか写っていませんので精測はできませんが、別視野でLandoltの標準星を撮像して測光を行いました。大気吸収による減光は補正してあります。使用機材は18cm f/5.5反射望遠鏡+IフィルターCCDです。3月8日18時07分には、CCD全光度が2.5等、彗星には集光した視直径2'のコマと位置角120゚の方向に長さ2'の広がった淡い尾がありました。3月9日18時14分にはCCD全光度が2.2等、集光が極めて強い3'のコマと位置角110゚の方向に長さ10'の広がった尾がありました」と報告されました。その日の朝09時00分に『報告ありがとうございます。そうですか。2等級ですか。もうちょっと明るいかと思ったのですが……。私も、これまで3回標準レンズで狙ってみましたが、写っていませんでした。空が悪い……』という返信を送っておきました。上尾の門田氏の報告は09時46分にダンとゴンザレスに送っておきました。門田氏には、3月10日22時05分にこのことを伝えました。しかし、そこには『観測は中央局(CBAT)に報告しておきましたが、残念ながら最近のCBETには、このような興味ある観測が掲載されません』と書いておきました。ところが……、ダンは、最近ではめずらしく、氏の観測を3月12日08時02分到着のIAUC 9254で伝えてくれました。

門田氏の観測成功を知った大崎の遊佐徹氏からは、3月10日10時16分に「先日は、EMESでPANSTARRS彗星の情報をいただきありがとうございました。いよいよ近日点通過ですね。アストロアーツの天文ニュースで拝見しましたが、日本国内での初観測はやはり門田さんでしたね。さすが……としか言いようがありません。私も昨日にチャレンジして、なんとか写りましたので画像を紹介します。宮城も黄砂の影響があり、低空の太陽の丸い形がはっきりわかるほど、かなり霞んだ状態でした。尾はまったく写っていません。太陽を基準に望遠鏡のアライメントをしておき、日没後に木星をCCDの視野に入れて、その後木星の衛星を使ってピント合わせ、そして木星で最終的なアライメントを行い、彗星を導入をしました。ニュースで紹介された門田さんの方法を参考に、Iバンドフィルターをかけて暗くなる前から0.01秒露光、0.5秒、1秒露光と飽和しない限度で露光を延ばしていきました。そして、日没から21分後の17時59分にようやくその姿をとらえることができました。視野をわずかに動かして、チップのゴミやノイズでないことを確認しながら、山裾の濃い雲に消える18時11分すぎまで追いかけました。画像は、18時02分前後(地平高度4.5゚)の7コマをコンポジットしたものです。なお、18時05分ごろ、同架した10cm屈折で目視しましたが、眼視ではまったく見えませんでした。今後、条件は良くなっていきますので、晴れたならば追いかけていきたいと思います」というメイルが届きます。

遊佐氏には、門田氏から3月10日19時14分に「ニュースをご覧いただき、ありがとうございました。8日は仕事が休みの日で、夕空は雲が多かったのですが、Iバンドフィルターで薄明のカブリが低減されて晴れ間からなんとか撮影できました。3月5日と6日に会社の屋上から望遠レンズで狙ったのですが、全く写りませんでした。薄明の明るさのために暗くなるまで写らないと判断し、Iバンドフィルターを使うしかないと考えてフィルターを取り付けられる18cm反射を架台にマウントして、ピント合わせなど二晩テスト撮影を行って、夕方の観測に備えました。3月9日の画像では、彗星の高度が8日より少し高くなり、強く集光した彗星像で尾も明瞭に写っています。もう少し明るくなると思ったのですが、眼視では1等級でしょうか。春霞と黄砂で透明度が低下していますので、時期的に空の条件が良くない点は残念ですね」という返信が送られていました。

281P/MOSS周期彗星(2013 CE31)

そんな時期、3月10日朝にそれまでの1か月間に観測された29個の彗星について、軌道改良を行いました。それらの軌道を「2月の軌道改良」として、3月10日13時11分にEMESに入れ、仲間にも送付しました。ところで、それらの計算が終了するといつも、過去の観測の中に彗星が記録されていなかったかを調べます。周期彗星(楕円軌道)だけでなく、放物線の彗星についてもです。すると、MOSS周期彗星(2013 CE31)の過去の回帰時に同定が見つかります。

この彗星は、MOSSサーベイの50cm反射望遠鏡で2013年2月5日と6日にしし座を撮影した捜索画像上を動く、20等級の小惑星状天体として発見されたものです。この天体には小惑星として仮符号2013 CE31が与えられます。発見から3日が経過した2月9日には、Pan-STARRSサーベイからも同所の1.8m望遠鏡で撮影した捜索画像上に発見されたこの天体が報告されます。しかしこのとき、天体には西北西に伸びた60"より長い尾が写っていました。2月10日にマウナケアの2.0m望遠鏡で行われた確認観測でも、天体には同じ方角に伸びた約60"の尾が広がっていることが認められました。2月17日の月惑星研究所のスカッチによる91cmスペースウォッチ望遠鏡での観測では、西に伸びた尾が見られ、さらに同日、2.3m望遠鏡で行った観測でも、天体には7"のコマと西北西に100"にまで伸びた細長い尾が観測され、この小惑星は彗星であることが確認されました。東京の佐藤英貴氏も2月18日にこの小惑星を観測し、天体には、西北西に30"の直線状の細い尾があること、CCD全光度が20.0等であったことを報告しています。なお彗星には、スペースウォッチ・サーベイで1月19日に撮影されていた捜索画像上に発見前の観測が見つかっています。

軌道改良を行った時点では、発見から約3週間ほどが経過していました。見つかった彗星の過去の観測は、2000年11月17日のスペースウォッチ・サーベイと2002年3月12日にパロマーで行われていたNEATサーベイの捜索画像上に撮影されていたものです。彗星の光度は21等級と20等級でした。このときの初期軌道からのずれは、2000年の観測には0゚.22、2002年の観測では0゚.27で、近日点通過時刻の補正値にして、それぞれ、-1.58日と-1.55日でした。この同定結果を13時10分にEMESに入れるとともに、ダンとドイツのメイヤーに連絡しました。13時15分のことです。

メイヤーはその日の内に、この彗星に、パロマーで行われたNEATサーベイで2002年2月4日から3月4日までの四夜に撮影された捜索画像上、そして、ハレアカラで行われたNEATサーベイで、2002年2月8日と3月16日に撮影された捜索画像上でさらに多くの発見前の観測を見つけたことを18時17分に報告します。この頃の彗星の光度は19等級前後でした。ダンは、3月11日11時20分到着のCBET 3436でこの同定を公表してくれました。最近では、小惑星として発見され、のちに彗星の活動が認められ、新彗星となる多くの天体がありますが、このような天体は、過去に観測されている可能性が極めて高いため、十分な注意が必要です。なお、彗星の前回の近日点通過は2001年8月16日でした。

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