月に水の存在は確認されず
【1999年10月13日 NASA・テキサス大学】
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NASAは今年7月31日、月探査機「ルナ・プロスペクター」を月の南極付近(87.7°S, 42.1°E)に位置するクレーターに衝突させ、月の極付近に大量に存在すると思われている水の存在を確かめるための観測が行われた。しかしその後の解析でテキサス大学の研究グループは、水を特定するためのデータは得られなかったことを報告した。 (左図)ルナ・プロスペクターが衝突したクレーター周辺のようす。白の部分は太陽から年中光があたらない領域、陰の部分は地球から見えない領域を表している(Jean-Luc Margot氏(NAIC)による) |
月探査機ルナ・プロスペクターは約1年半にわたる月調査の結果、月の周囲に大量の水素を検知した。このことにより、月の両極付近にはこれに相当する大量の水が含まれている可能性が指摘された。そこでNASAはミッションの締めくくりとしてルナ・プロスペクターを月面に衝突させ、その衝撃により月面から水を含んだ塵の噴煙があがることを期待したのである。1999年7月31日、12以上の地上とハッブル宇宙望遠鏡がその墜落地点を観測した。しかしその直後の観測報告では、噴煙が観測されたという事実は報告されていなかった。
この研究を進めてきたテキサス大学のデイビッド・ゴールドスタイン博士らの研究グループは13日、イタリアのPaduaで開かれたアメリカ天文学会惑星分科会年会で発表し、この衝突で月に水の存在は発見できなかったと報告した。この理由として、
・探査機が目標を誤って、クレーター内の乾いた土や岩に衝突した。
・水はクレーターに存在しなかった。つまり以前にルナ・プロスペクターが検知した水素は純粋なもので水の成分ではなかった。
・墜落によってできた噴煙はクレーターの縁よりも高くは上がらず望遠鏡では見えなかった。もしくは、実験で使われた12以上の専門望遠鏡は正しく狙いを定められていなかった。
などを挙げている。
月に水を見つけることは、将来コロニーや宇宙船の燃料製造ステーションの建設を容易にするだけでなく、酸素と水素へ分解することによりロケット燃料にしたり、酸素を生物の呼吸に用いることができるなど、大きな意義があるため、今回の研究結果が注目を集めていた。
<参照>・Lunar Prospector Impact Page(英文)
・テキサス大学によるプレスリリース(英文)
<参考ニュース>
・NASAの月探査機が月面に衝突
・ルナープロスペクターの月面衝突、観測されず