NASAはマーズ・ポーラー・ランダーの失敗を予期していた

【2000年3月22日 CBS MarketWatch (2000/3/21)】

1999年12月3日にNASAの火星探査機マーズ・ポーラー・ランダー(MPL)が火星南極地方に降下後消息を絶ったが、UPI通信社が得た情報によると、NASAにとってこれは予期された事態に過ぎなかったという新事実が判明した。

MPLが火星に到着する前に行われた調査により、すでに着陸制動エンジンに関する致命的な欠陥が判明していたが、NASAはこの調査結果を公開しなかった。

1999年9月23日には同じくNASAの火星探査機であるマーズ・クライメート・オービター(MCO)が火星大気に深く突入しすぎて失われるという失敗があった。このミスの原因はプロジェクトに関わる複数チーム間の意思疎通の不充分であり、それをNASAが管理しきれなかったことにあるが、MPLの失敗に関しては、第一の原因は管理上の誤った考え方にあった。このことは、NASAの評判を大きく失墜させるものだ。

UPIが非公式に得た情報によると、MPLの着陸制動エンジンは適合試験に合格していなかった。だが、資金と時間が必要な再設計は行われず、ある無名のNASAの中間管理職員は、単に試験条件を変えることにより試験に合格させたのだ。

MPLの制動エンジンはヒドラジン燃料を使用するロケットエンジンを採用していた。この燃料は「触媒ベッド」または「キャット・ベッド」と呼ばれる金属製発火格子を通過するときに点火され、推力を生み出す。

この「キャット・ベッド」は火星への長い航海のあとでは低温であることが考えられた。したがって、はじめは低温での点火試験が行われた。しかし、この条件の下では点火に失敗するか、点火には成功しても不安定で制御不能であるかであった。そして、エンジンが性能を発揮できるよう条件が変えられ、高温での試験が行われ、合格した。だが、この条件は実際の宇宙飛行においてはありそうもない条件であった。

9月にMCOが管理上の不手際により失敗した後、NASAはMPLにも同様の問題がないか調査をはじめた。そしてUPIの情報筋によると、このエンジンに関する欠陥はMPLが12月3日に着陸を試みる2〜3日前には判明していたという。だが、時すでに遅く、何の対策も施しようがなかった。そしてNASAは失敗が予測されることについて何らの情報開示も行わなかった。

MPLの問題調査チームはまた、第2の致命的欠陥についても認識していたようである。これは、MPLの着陸判定機構の欠陥により、空中にあるうちに着陸判定が行われてしまうため、たとえエンジンが完全でも正常な制動噴射が行われないというもの(詳しくは関連ニュース「MPLの失敗は単純な設計ミス?」を参照のこと)。

MPLはまた「ディープ・スペース2」と呼ばれる2つの小型「ペネトレイター」探査機の放出を行った。これは火星に自由落下を行い、毎秒200メートルの速度で接地して火星の地中深くに食い込むように設計された探査機。だが、この2つの小型探査機からの信号を受信しようという試みもことごとく失敗に終わった。調査チームは、この探査機の通信機は接地の衝撃に耐えられないだろうという報告も行っているようだ。だが、単に固い地点に落下したために破壊されたという可能性もまた考え得る。

さらに、NASAのエンジニアはディープ・スペース2に搭載された電池に関する懸念も持っているようだ。この電池は打ち上げのときに充電された後、火星突入を行うまでの1年以上もの間チェックされないままであったのだ。したがって、火星突入のときにはすでに充分な電力を維持していなかった可能性がある。

UPIの情報筋は「事情に詳しい者でディープ・スペース2の成功を本当に信じていた者はいない。」と語っている。

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