CIコンドライトのテイギッシュ隕石
【2000年11月6日 国立天文台・ニュース(390) (2000.11.2)】
今年の1月にカナダに落下した隕石は、ほぼ理想的な条件下に回収され、これまでに研究された中ではもっとも始原的な炭素質隕石であることがわかりました。
2000年1月18日の夜明けに、カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州の北西部に隕石が落下しました。落下の際の火球の光はアメリカの軍事衛星で検出され、大勢の人もその火球を見ました。70人以上の目撃証言と、直後のダスト雲を撮影した24枚の写真、5つのビデオ記録を基に軌道が計算され、この隕石は地平線と16.5度の角度で、北西から毎秒15.5キロメートルの速度で飛来したことがわかりました。また太陽系内の軌道は、長半径2.1天文単位、離心率0.57の楕円軌道で、典型的なアポロ型の小惑星であることも確認されました。落下隕石の軌道を確定したのは、これが5例目です。
25日になって、ブルック(Brook,J.)は最初の隕石破片を凍結したテイギッシュ湖の氷上で発見し、手で触れることなく注意深く回収しました。彼はその後引き続いて数10個、總計0.85キログラムを発見しています。さらに4月20日から5月8日までの公開捜査で、16×5キロメートルの範囲の湖上で410個もの破片が発見されました。5キログラムのものが最大でした。これ以外に、森林や山地にも破片が落下しているとは思われますが、湖の名をとって、この一群の隕石はテイギッシュ隕石と呼ばれます。落下後まもない捜索と、寒冷地の凍った湖の上、注意深い取り扱いなどにより、汚染をこれほど最小限に押さえた隕石はあまり例がありません。これは今後の研究に大いに役立つと思われます。
その後の分析によって、このテイギッシュ隕石はCIコンドライトと呼ばれる、もつとも始原的な隕石であることが明らかになりました。CIコンドライトはここ200年の1000回におよぶ隕石落下の中でわずか5例に過ぎず、南極の採集でも2例の15グラムしかありません。今回の落下は、始原的な隕石を研究する上でたいへん貴重なものといえましょう。
参照 Brown,P.G. et al., Science 290,p.320-325(2000).
Grossman,J.N., Science 290,p.283-284(2000).
McSween,H.Y., Nature 407,p.843-844(2000).
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