ヨーロッパ宇宙機関、ロシアによるISS観光旅行計画を非難
【2001年2月6日 SPACE.com / Space News (2001.02.02)】
ロシアは、アメリカの実業家デニス・ティトー氏を史上初の宇宙観光旅行者として国際宇宙ステーション (ISS) に連れて行くという契約を結んだことを発表したが、これに対しヨーロッパ宇宙機関 (ESA) のISS計画チーフであるJorg E. Feustel-Buechl氏は、2月1日の記者会見と2月2日のインタビューにおいて「ISSは未完成であり、その安全性はまだ確立されていない。この状態で民間人を送り込むのは無責任である。」とロシアを非難した。
ISS計画は、アメリカ、ロシア、ヨーロッパ各国、カナダ、日本など世界16か国が参加する巨大な国際共同プロジェクトであり、ISSへの乗組員の受け入れについては、参加各国の承認が必要。ロシアのISS観光旅行計画に対し、参加各国の承認はまだ得られていない。そして、「もしロシアがこのままISS旅行計画を強行すれば、それは国際協定違反である」とFeustel-Buechl氏は警告している。
だが、NASA関係者によると、ISS計画に関する国際協定では、安全性や限られた飛行機会を有効に活かすことについて関係各国の合意が必要と規定されているが、観光旅行者など民間人の扱いについては、明確な取り決めは無いという。
匿名希望のロシアの関係者は「私たちが乗組員に誰を選ぶかについて、NASAの承認は必要無い。選考結果について届け出る必要があるだけだ。」と強気だ。
今のところNASAは、ロシアのISS観光旅行計画について、明確な態度を示していない。NASAのISS計画責任者であるTommy Holloway氏は、いくつかの根拠を元にロシアの計画について難色を示している。しかし、NASAが公に認めるところによると、NASAがロシアに対してできることは、計画を再考するように圧力をかけることだけだろうという。
「ロシアは彼らの宇宙船の鍵を握っている。したがって、物理的な視点からいうと、ロシアがそこに誰を乗せて宇宙船を打ち上げようとも、我々はそれを阻止することはできない。」Holloway氏は、1月11日に行なわれた記者会見においてこう認めているが、「一方で、我々はロシアに対しひじょうに強い影響力を持っており、ロシアの決定について影響を与えることはできるだろう。」とも語っている。
NASA本部は、ロシア側との正式な協議はまだなされていないとして、ティトー氏のISS訪問が認められるかどうかについてコメントすることを拒否している。
NASAとロシアのISS計画事務局は、2月12日にNASAのジョンソン宇宙センターにおいて開催予定の高官どうしの話し合いにおいて、ティトー氏のISS訪問に関する協議を行なうことになっている。
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