長谷田さん、「うずまき星」が特異変光星であることを発見

【2001年4月23日 VSOLJニュース (051)】

WR104

WR104の回転のようす ケック望遠鏡により1998年4月、6月、9月に撮影された3枚の画像をもとに、中間画像を補完生成して作成。回転周期は約220日。渦巻きの直径はおよそ160天文単位で、太陽〜冥王星間距離の倍程度に相当。(カリフォルニア大学バークレー校による解説ページより)
Credit: U.C. Berkeley Space Sciences Laboratory/W.M. Keck Observatory

いて座のM8やM20は天体写真でおなじみの星雲ですが、この星雲のそばに WR104 という極めて特異な天体があります。

WR というのは Wolf-Rayet star (ウォルフ・ライエ星) のカタログ番号です。ウォルフ・ライエ星というのは非常に重く明るい星で、星が進化の末期にさしかかり、星の外層の水素が飛ばされてしまって、星の内部が露出しかけているような天体です。これらの天体はそう遠くない将来に超新星爆発を起こすと考えられています。

このようなウォルフ・ライエ星は銀河系で200個あまりしか知られてませんが、その中でもこの WR104 という天体は他に類例をみないような、非常に奇妙な天体です。ハワイの口径10メートルのケック望遠鏡で撮られた画像から、2つの星が回りながら、まるで回転花火のようにうずまき状にガスを放出している姿が捉えられたのです(Tuthillほか(1999)、Nature 398, 487)。1999年4月、このニュースは国内でも報道され、ご記憶の方もあるかも知れません。

たて座新星2000=たて座V463を発見された (VSOLJニュース37, 38参照) 長谷田勝美さんは、新星・変光星などの捜索中に長谷田さんの82番めとなる新変光星 HadV82 を発見し、日本変光星観測者連盟 (VSOLJ) に報告されました。詳しい調査の結果、この変光星が上記 WR104 と同一であることが明らかになりました。

長谷田さんの測定の結果、この星は11.8等星から14.5等星以下まで、なんと2.7等級以上の大きな変化を示すことがわかりました。この「うずまき星」がこのような大きな変化を、しかも1か月程度の比較的短い時間で起こすことは全く予想されていませんでした。

長谷田さんのこの発見はこの天体の謎を一層深めるとともに、うずまきの成因など、まだ解明されていないこの星の正体に迫る重要な発見になるものと思われ、世界の天文学者の注目を集めています。

天体の位置は以下の通りです

   赤経: 18h 02m 04s.17 (J2000.0)     赤緯: -23゚ 37' 42".3

渡辺努さんの作られた以下の観測用星図があります。