大惑星の衛星探し

【2001年7月26日 国立天文台天文ニュース (460)

木星、土星などにたくさんの衛星が発見されていることは、すでにお伝えしています(天文ニュース402,408)。今回は、これらの発見事情についてお知らせします。

これらの発見は、8〜10メートルの大望遠鏡によるのでも、宇宙望遠鏡によるのでもなく、中間サイズ(3〜5メートル)のたくさんの地上望遠鏡による系統的な捜索によって成し遂げられたものです。惑星は周囲にその惑星の重力が太陽の重力より大きい球状の領域をもち、これを「ヒル球」といいます。衛星はこの範囲内に存在するのです。コート・ダジュール天文台のグラッドマン(Gladman,B.)たちは、このヒル球内にあってゆっくり移動する天体を、23等の明るさのものまでくまなく捜索する方法を採ったのです。

そうはいっても、木星、土星、天王星、海王星のヒル球を地球から見た大きさは、それぞれ48, 22, 6, 7平方度もあります。一方、10000×10000ピクセルのCCDを使っても、一度に観測できるのはせいぜい4分の1平方度にすぎません。したがって、ヒル球全体を捜索するのは容易なことではありません。そのため、グラッドマンたちは捜索範囲の狭い遠い惑星から始め、それがまず天王星のいくつもの衛星発見につながったのです。

それでも、コンピュータが進歩し、一晩で30ギガバイトにも達する観測データをリアルタイムで処理できるようになったこと、また移動する天体を自動的に検出する精密な計算アルゴリズムが開発されたことで、捜索は多分に進めやすくなりました。土星の衛星探しには、ホプキンス山の1.2メートルからパロマー山の5メートルに至る11基の望遠鏡がそれぞれ捜索範囲を分担して使用され、その結果新たに12個の衛星が発見されて、土星の確認衛星数は30個に達したのです。これで、半径4キロメートル以上の衛星はほぼ完全に検出されたと考えられます。その追跡観測から、これらの衛星は太陽を回る惑星のように同心円状の軌道ではなく、交差し、入り乱れた軌道をもっていることがわかりました。しかし、主としてその軌道傾斜から、いくつかの族に分類できることがはっきりしてきました。これは、はじめは一個であった親衛星が、他の衛星または彗星などの衝突によって破砕された結果であろうと推測されています。

捜索範囲の広い木星の衛星探しは、ハワイ大学のシェパード(Sheppard,S.S.)たちによって昨年末に始められたばかりですが、すでに10個の新衛星が発見されています(天文ニュース408)。確定されている木星の衛星数はいまのところ28個で、土星より少ない状態です。しかし、近い将来、木星が最大数の衛星をもつ惑星になるに違いありません。

<参照>

  • Gladman,B. et al., Nature 412, p.163-166(2001).

<関連ニュース>


※ 国立天文台・天文ニュース (458)『「はくちょう座新星2001」の発見』で、「さらに九州大学の山岡均(やまおかひとし)さんは、その精密位置を(中略)と報告しています。」とありますが、正確には「さらに埼玉県上尾市の門田健一(かどたけんいち)さんは、その精密位置を(中略)と測定し、九州大学の山岡均(やまおかひとし)さんが報告しています。」となります。

関係される皆様には情報をお寄せいただき有難うございました。