不規則なパルサーが明らかにする中性子星の内部

【2002 年 1 月 16 日 Goddard Space Flight Center Press Release

中性子星が自転ごとに規則正しくパルスを放つような天体をパルサーと呼ぶ。パルスの周期は一般的にはミリ秒の精度だが、そんな規則正しいパルサーの中に、突然自転速度がわずかに速くなるものがある。このようなパルスが乱れる「グリッチ」と呼ばれる現象は、実はパルサー内部の状態を明らかにする手がかりとなるのだ。

PSR J0537-6910 と呼ばれる大マゼラン雲にある X 線パルサーは、1998 年に NASA の衛星 RXTE(Rossi X-ray Timing Explorer)によって発見された。普段は 16 ミリ秒ごとにパルスを放射している(つまり 16 ミリ秒で自転している)が、2 年半の間に 6 回ものグリッチが観測された。これまで知られていたもっともグリッチが頻繁に発生するパルサーは「ほ座パルサー」で 25 年間で 13 回観測されていたが、PSR J0537-6910 ではこれをはるかに上回る頻度で発生していることになる。

1 回のグリッチでは太陽が 3000 年以上かけて放出するエネルギーが一度に放射される。グリッチが起こる原因については、超流体(摩擦がない流体)状になっている中性子星内部の回転速度と中性子星表面の回転速度の差がある程度になると超流体が限界状態に達して角運動量が表面に輸送され、それによって表面の自転速度が速くなるため、と考えられている。

グリッチの強さ(言い換えるとどのくらいパルサーの自転が速くなるか)は中性子星の質量や内部の密度構造などによって変わってくる。この現象を観測することで、今までよくわかっていなかった中性子星の内部構造についての研究が進むことが期待される。

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