土星の衛星テティスによる恒星食の観測に成功

【2002年12月19日 国立天文台天文ニュース(607)

2002年12月16日3時57分(日本時間)頃、国内の7名のアマチュア天文家が土星の第3衛星テティス(Tethys)によるおうし座の恒星の食の観測に成功しました。惑星の衛星による恒星食が観測されることは世界的にも極めて希れで、国内では史上初の快挙です。

土星の衛星がおうし座の9.1等の恒星(TYC1310-02435-1)を隠しそうだ、という予報は、直前になってIOTA(The International Occultation Timing Association; 国際掩蔽観測者協会)より発表されました。国内では掩蔽(えんぺい)観測者のネットワーク(JOIN; Japan Occultation Information Network)を通じて観測が呼びかけられました。この呼びかけに応じて、柏倉満(かしわぐらみつる)さん、浜野和弘巳(はまのわひろみ)さん、八重座明(やえざあきら)、高島英雄(たかしまひでお)さん、橋本秋恵(はしもとあきえ)さん、北崎勝彦(きたざきかつひこ)さん、片山栄作(かたやまえいさく)さんの7人が観測を試み、恒星が隠される様子を見事に捉えたものです。

今回の現象では、衛星の掩蔽帯は、遠くヨーロッパにも達していましたが、天候が不良だったようで現在までに観測の成功の報はいままでのところ2件だけで、日本のように7名の観測があるのは貴重です。これらの報告にもとづいた整約結果は、せんだい宇宙館のホームページ上で速報されています。いまのところ、各地の潜入・出現の時刻測定から、テティスの実直径1060キロメートルによくフィットする円弧が得られています。今後、ヨーロッパの観測等も追加して更に詳しく研究されることでしょう。

今回は7人の他にも、天候により観測できなかった人からの報告も寄せられています。こういった恒星食では、多くの観測者の協力によって、意味のある貴重な結果が得られます。日本には優秀なアマチュア天文家が数多くいますので、これからもこの分野では大きな成果が得られていくことでしょう。

注:この天文ニュースは、鹿児島県川内市・せんだい宇宙館の早水勉(はやみずつとむ)さんにいただいた文章を元に作成しました。

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