28時間半で主星の周りを巡る系外惑星が発見された
【2003年4月25日 ESO Press Release】
ESO(ヨーロッパ南天天文台)のVLT(The Very Large Telescope)に取り付けられた高性能分光器を使った観測で、主星の周りをわずか28時間半で巡っている系外惑星が発見された。
OGLE-TR-3という符号のつけられた恒星は、もともとは光度の変化する恒星の1つとしてリストアップされたものである。恒星の明るさが変わる原因にはいろいろあるが、このリストに挙げられた恒星はどれも、系外惑星と考えられる天体が恒星の前を横切る時に暗く見えて明るさが変わると考えられているものだ。
実際に惑星が存在するかどうかを確認するためには、恒星の運動を観測し速度の変化を調べる必要がある。恒星の運動がふらつくようすが観測できれば、惑星からの重力を受けている強い証拠が得られることになる。また、速度変化の大きさは惑星の質量や距離によるので、運動のようすから惑星の質量などを推定することもできる。
OGLE-TR-3の場合、明るさの変わる周期と速度の変化する周期が一致していることから、系外惑星が存在する可能性が高いということがわかった。また、明るさが変わる(つまり、主星の前を惑星が横切るように見える)ということから、惑星の質量をかなり正確に求めることができた。一般的には、惑星の軌道が見かけ上傾いていることを考慮するため、惑星の質量は下限でしか求められないのだ。
得られた結果によれば、惑星は木星よりもやや大きく、質量は木星の半分しかないということだ。そして、OGLE-TR-3からわずか350万kmしか離れていないところを28時間半の公転周期で巡っている。この距離は、太陽から水星までの距離の15分の1以下である。
このような大きな惑星が主星のすぐそばで形成されたとは考えにくいため、おそらくはもっと外側の軌道から内側へ入り込んできたのだろうと考えられている。どのように軌道が変化してきたのかについては今後の研究が待たれるところだ。ESOでは秒速1mの単位で星の運動を調べられるさらに高性能な分光器HARPSをテスト中だが、この機器が本格的に運用され始めれば、地球の数倍程度の質量しかない系外惑星の存在までも明らかにしてくれるということだ。大いに楽しみにしたい。