ガンマ線バーストは極超新星が起源?

【2003年6月18日 Subaru News

国立天文台、東京大学、テキサス大学(米国)などからなる観測グループが、 ガンマ線バーストGRB 030329(超新星SN2003dh)の分光観測に成功し、この天体が極超新星であることを明瞭に示した。

(GRB 030329と別の2つの極超新星のスペクトル図)

GRB 030329のスペクトル(黒)と、別の2つの極超新星のスペクトル(赤、緑)。よく似た特徴をしていることがわかる(提供:国立天文台、すばる望遠鏡)

この天体は、2003年3月29日にガンマ線バースト探査衛星HETE-2によって最初に捉えられ、GRB 030329と名づけられた。ガンマ線バーストとは、天球の一点が突然ガンマ線波長で明るく輝いて見える天体現象である。このガンマ線バーストGRB 030329に対応する天体が 可視光でも見つかり、追跡観測によってIc型超新星と似たスペクトル示すことが判明した。このため、同じ天体に対してSN2003dhという超新星としての名前もつけられた。ガンマ線バーストという現象は、最初の発見から30年あまり経った現在でも起源がよくわかっておらず、可視光でも捉えられたこの天体に注目が集まっている。

観測は、すばる望遠鏡の微光天体分光撮像装置FOCASを用いて、ハワイ時間2003年5月7日及び8日に行われた。グラフからわかるように、すばるで得られたこの天体(SN2003dh/GRB 030329)のスペクトルは、過去に見つかった他の超新星のスペクトルとよく似た特徴をもっている。比較として挙げられているSN1997efやSN1998bwは、爆発のエネルギーが通常の超新星よりも一桁ほど大きく、極超新星とも呼ばれている。

過去にもガンマ線バーストと超新星の繋がりを示唆する観測例は存在するが、 スペクトルの一致がこれだけ明瞭にとらえられたのは、今回の天体が初めてである。ガンマ線バーストの起源に迫る重要な観測結果といえるだろう。また、4月上旬に撮られたスペクトルと約1か月後の今回撮られたスペクトルは変化していた。超新星爆発の外部と内部で の構造の違いを反映しているとも考えられるが、詳しい解釈は今後の解析を待つ必要がありそうだ。

これらの観測結果については、国際天文連合回報(IAUC)8133号で5月17日に速報された。現在、より詳しい解析が進められており、その成果も今後発表していく予定だということである。