チャンドラ、楕円銀河中に連なる多数のブラックホールと中性子星を発見

【2003年12月12日 Chandra Press Room

NASAのX線観測衛星チャンドラが、楕円銀河の中で約5万光年ほどの範囲にわたって広がる多数のブラックホールと中性子星を発見した。美しいネックレスのように写っているブラックホールと中性子星の連なりは、数十億年前におきた銀河同士の衝突が起源らしいことがわかっている。

(NGC 4261の画像)

左:チャンドラによるX線画像、右:可視光画像(提供:X線:NASA/CXC/A. Zezas et al.、可視光:パロマー山天文台 DSS)

チャンドラによって観測されたのは、おとめ座にある楕円銀河NGC 4261で、地球からは約1億光年離れている。これまでの可視光や電波の観測によって、銀河の中心部分で何か不思議なことが起こっていることがわかっていた。しかし、本当に興味深い結果はX線の観測で初めて明らかになった。銀河のへりの部分に、ブラックホールや中性子星が分布しているようすが捉えられたのだ。

周辺部分のX線源は次のようにしてできたと考えられている。まず、NGC 4261の重力につかまった小さな銀河が引きのばされ、大きなガスの尾をつくり、そのガスがNGC 4261へと落ち込んでいく際に発生した衝撃波によって多くの大質量星が生み出された。これらの大質量星は寿命が短く、数百万年の間にブラックホールや中性子星へと進化する。こうして生まれたブラックホールなどの高密度天体のうちいくつかは伴星を伴っており、その伴星のガスがブラックホールへと落ち込んでいくときに、まぶしいX線を放つのである。つまり、元をたどれば、NGC 4261に捉えられた小さな銀河がX線源となっていると言えるだろう。

今回の発見によって、チャンドラによるX線観測が、過去におこった銀河同士の衝突や合体を調べるのにたいへん適していることが示された。楕円銀河は小さな銀河が何度も衝突を繰り返して大きくなって形成されたとする説が一般的だが、X線による観測は、こういった銀河の起源について調べる有効な手段だということである。