若い巨星の周りに自ら光り輝くディスクが見つかった
【2003年12月26日 JAC Pressroom】
イギリス赤外線望遠鏡UKIRT(United Kingdom Infrared Telescope)の新しい装置URIST(UKIRT Imager Spectrometer)による観測から、若い巨星を取り巻く、0.5光年もの大きさを持ち自ら光っているガス円盤が見つかった。このようなガス円盤が自ら光っているのが発見されたのは、これが初めてのことである。
観測されたのは地球から2万光年ほど離れた若い恒星状天体で、IRAS 07427-2400という番号が付けられている。中心にある星の年齢は10万歳ほどで、我々の太陽の年齢50億歳と比較するととても若い。この星の表面には、直径が冥王星の軌道の千倍もある星周ディスクからガスやちりが降着し続けているため、星はたえず変化している。星の明るさは太陽の千倍以上もあるということだ。
このような恒星の周りに原始ディスクが存在することは以前から知られていたが、今までは他の星雲からの光の影(シルエット)としてしか見ることができなかった。今回発見されたディスクの場合は、ディスクに存在する分子の温度がかなり高いため、水素分子や電離した鉄の光を放ち、自ら光って見えているのである。
UKIRTのデータによれば、今回の発光現象は中心星の強い光によるものではなく、中心星からの時速数十万キロという超音速の衝撃波によって、ガスやちりが数千度の高温に熱せられた結果らしいということだ。また、ディスク中の大量のガスやちりが恒星へと降着していくことで衝撃波がエネルギーを得ている可能性もある。詳しいことはさらに調べる必要がありそうだ。
太陽のような恒星が作られた後に残ったガスやちりは、やがて集まって惑星を生む材料となる。今回のディスクは太陽の150倍の質量を持つため、我々の太陽百個分の恒星と多くの惑星を生み出す可能性があるということだ。しかし、観測結果によれば、残念ながら惑星の誕生は期待できないらしい。衝撃波によって熱せられたガスの温度が、惑星の材料となるには高すぎるというのだ。
このディスクでは、星団や数々の惑星は生まれず、最終的には中心星の発する強い紫外線によって破壊されてしまうと考えられている。すでに紫外線によってディスクの端の部分が削りとられ、ガスが蒸発しつつあるようだ。UKIRTによって似たような星の周りに開いたリング状のものが発見されているが、それは巨大ディスクが完全に蒸発しきったあとの残骸ではないかと考えられている。ディスクは、惑星を生み出すのではなく自ら輝く道を選んだが、紫外線によって破壊されてしまう運命にあるということである。
研究者の今後の課題は、似たような巨星を取り巻く高温の分子ディスクを発見し、さらにスーパーディスク(巨大ディスク)の存在を巨星誕生の理論に当てはめてみることにある。