遠方クエーサーによって宇宙の暗黒時代末期を探る
【2004年2月25日 The University of Arizona News】
ひじょうに遠くにあるクエーサーを観測してデータを得ることは、宇宙初期に形成されたブラックホールや銀河についての情報を得ることにつながり、初期宇宙に関する理論確立のためにも重要だ。
史上最大の宇宙地図作成プロジェクトである「スローン・デジタル・スカイ・サーベイ(Slone Digital Sky Survey; SDSS)計画」のメンバーは、遠方のクエーサーをこれまでに13個発見している。クエーサーはひじょうに明るくコンパクトな天体で、中心にあるブラックホールのエネルギーで輝いていると考えられている。発見されたクエーサーのうちもっとも遠いものはおおぐま座にあり、地球から約130億光年の距離にある。これは、宇宙誕生からわずか7億年後にあたる距離だ。
このような遠方にあるクエーサーを調べることで、まだまだ謎の多い初期宇宙についての情報がもたらされる。また、観測を進めることで、新たな疑問も投げかけられる。たとえば、太陽の数十億倍もの質量をもつ初期宇宙の超巨大ブラックホールについての急激な形成プロセスは未だ謎のままで、関連のデータや研究が必要とされている。
さらに、遠方のクエーサーの周辺に炭素、窒素、鉄などの重元素が豊富に存在している証拠が得られている。電波の観測では、分子雲の重要な構成要素の1つである一酸化炭素も検出された。こういった元素や化合物は宇宙誕生から数十億年後に形成された成熟した銀河に見られるものだが、どうやってこれらの物質が初期宇宙のクエーサーの周辺に存在するようになったのかはまだわかっていない。
遠方のクエーサーを観測することは、いわゆる「宇宙の暗黒時代」の終わりから宇宙で初めての銀河やクエーサーが形成された「宇宙のルネッサンス期」の始まりを見ることであり、このころに起きた水素原子の電離プロセスを知る手掛かりにもなる。今後さらに遠方のクエーサーの発見が続けられることによって、この宇宙で一番初めに作られた第一世代の銀河などに関する理論の確立が進むことになるだろう。
なお、スローン・デジタル・スカイ・サーベイの宇宙地図は、全天4分の1をカバーし、1億個の天体の位置と明るさが記録される予定だ。その中には10万個のクエーサーも含まれている。