スピッツァー望遠鏡が捉えた、美しい輝きを放つ星の生と死の舞台

【2004年3月15日 JPL News Releases

NASAの赤外線宇宙望遠鏡スピッツァーが、星の爆発の残骸Henize 206の美しく光輝くちりやガスを捉えた。この星雲は、数百年前に起きた星の爆発によって誕生したものだが、生まれたばかりの星が数多く存在している。

(スピッツァーが捉えたHenize 206の画像)

Henize 206。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech)

Henize 206は、われわれから16万3千光年離れた大マゼラン雲(われわれの天の川銀河の衛星銀河)にある。専門家によれば、Henize 206の観測データから、宇宙で繰り返される星の生と死のサイクルのようすがとてもよくわかるということだ。星が超新星爆発などによって死を迎えると、爆発によって生じる強力な衝撃波のために周りのガスが圧縮され、新しい星が誕生する。この新しく生まれた星が一生の終わりに再び爆発することで、次の世代の星誕生が始まるのである。

このような星間ガスのリサイクルは宇宙のいたるところで起こっているのだが、スピッツァー望遠鏡による観測以前には、生まれたばかりの星の存在を捉えることはできず、その存在を示唆するデータしか得られていなかった。星を包む毛布ともいえるガスとちりは可視光でも見えているが、赤外線で観測することでそのガスとちりを見通すことができ、ガスやちりの向こうにある若い星々が捉えられたのである。画像中、若い星々は白く明るい点として写されており、その周りのガスは青、緑、赤の疑似カラーで色付けされている。また、緑色のリングも過去の超新星爆発のなごりとして捉えられている。

また、興味深いのは、大マゼラン雲のガスに含まれる鉄などの重元素は、他の大きな銀河と異なりとても少ないということだ。太陽や天の川銀河における割合に対して、その20から50%程度しかない。この特徴は、同様に重元素の少なかった初期宇宙における星の一生のようすを推測するのに役に立つ。専門家は、数十億年前の星の一生の一部を、このHenize 206に垣間見ることができるのである。