最先端技術「バーチャル天文台」によるブラックホールの発見

【2004年6月17日 ESA Space Telescope News And Photo Releases

ヨーロッパの研究チームがバーチャル天文台(Virtual Observatory:VO)を使用し、従来の観測網から逃れていた30もの大質量ブラックホールを発見した。

(大質量ブラックホールとブラックホールを取り巻くちりのドーナツ状の構造(想像図))

大質量ブラックホールとブラックホールを取り巻くちりのドーナツ状の構造(想像図)(提供:ESA/NASA, the AVO project and Paolo Padovani)

これらのブラックホールは深宇宙オリジン・サーベイ(Great Observations Origins Deep Survey: GOODS)の観測領域に発見されたものだ。このタイプのブラックホールは、これまでにほんの数個しか確認されていなかったが、今回GOODSの領域に30個も見つかり、従来の予測の少なさを示す結果となった。少なく見積もってもこれまでの予測の2倍、もしかすると5倍は、このようなブラックホールが存在している可能性があるとのことだ。隠れた高エネルギーブラックホールとその住み処である活動銀河のデータは宇宙モデルにも影響を与えるので、その観測は1つの大きな目標とされてきたことである。

今回同チームによって発見されたのは周辺を厚いちりに囲まれた大質量ブラックホールだが、この発見にはひじょうにユニークな技術が使われている。バーチャル天文台と呼ばれるこの方法は、ハッブル宇宙望遠鏡やVLT、チャンドラX線観測衛星などさまざまな望遠鏡で観測した画像などの情報をネットワーク上から得て、各波長ごとの観測結果を総合するというものだ。

今回の発見が示すものは、バーチャル天文台という方法が、すでに実用的な研究ツールとして充分なレベルに達しているということだ。コンピュータのネットワーク上から簡単にデータを得、それらをたくみに利用するという、文字通り最先端技術の時代の到来だ。同チームによる他のタイプのブラックホールの調査は続けられるが、今後はスピッツァー宇宙赤外線望遠鏡なども利用したさらに多くの望遠鏡のデータが利用されるということである。