中間質量ブラックホールのX線によって輝く星雲が初めて発見された

【2004年6月18日 CfA Press Release

不規則矮小銀河に存在する100光年サイズの星雲が、中間質量ブラックホールのX線によってエネルギーを得ていることが発見された。太陽の25倍以上の質量を持つこのブラックホールは、宇宙で最初に生まれた星の残骸ではないかと考えられている。ブラックホールからのX線によって照らされる星雲が発見されたのは大マゼラン雲のLMC X-1以来わずか2例目で、中間質量ブラックホールによるものが発見されたのは初めてのことだ。

(中間質量ブラックホールの想像図)

中間質量ブラックホールの想像図。100光年サイズの星雲が中間質量ブラックホールのX線によってエネルギーを得ている(提供:David A. Aguilar, Harvard-Smithsonian Center for Astrophysics)

今回の発見の発端は、われわれから1000万光年離れた不規則矮小銀河Holmberg IIに強力なX線源が発見されたことだ。続いて、NASAのハッブル宇宙望遠鏡やチャンドラX線観測衛星、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)のXMM-Newton X線観測衛星などによって、星雲の中心に位置するX線源がピンポイントで観測された。その結果、中心に潜む謎の天体が、太陽が放つ全放射の100万倍に相当するまぶしいX線を放っていることがわかったのだ。

さらに、このX線のエネルギー源が、伴星である若い大質量星の質量を急速に吸収するブラックホールだということもわかった。若い大質量星からは約4年で地球1個分に相当する質量がブラックホールに吸収されており、100光年サイズの星雲の領域をイオン化させ輝かせるのに充分なエネルギーが生み出されている。

また、X線があらゆる方向に放射されていることから、このブラックホールの質量はわれわれの銀河系に見られる恒星質量ブラックホールよりも大きく、太陽の25倍以上、おそらくは40倍以上と考えられている。この質量は、中間質量ブラックホールにあたる。中間質量ブラックホールについては観測のサンプルが少なく、その形成については謎が多い。新しい観測、分析対象が発見された意味はひじょうに大きいと言えるだろう。