宇宙に浮かぶ巨大な空洞構造
【2004年8月17日 Hubble Newsdesk】
NASAのハッブル宇宙望遠鏡がひじょうにめずらしい巨大な空洞構造を捉えた。これは、若い高温の星が発する恒星風と強い紫外線によって、星を取り囲むガスに大きな空洞が作られたものだ。空洞の内側には、長さ4〜8光年の柱構造も発見された。
N44Fは、かじき座の方向、われわれから16万光年離れた矮小銀河である大マゼラン雲に存在する。中心にある星からの恒星風(高速粒子の流れ)によって膨張しているが、恒星風によって放出される物質の量は太陽風の1億倍にも達する。さらに、速度は時速700万キロメートルで、太陽風の時速150万キロメートルに比べてはるかに速い。この中心の明るい星はガスに覆われており、強烈な恒星風が周囲のガスとぶつかりあうことでガスが押し出され、空洞(泡)構造が作られているというわけだ。
N44Fのような巨大な泡構造をもつ星雲はあまり多くない。泡構造は、ウォルフ・ライエ星のような進化した大質量星の周りや星団の周りに見られる(「スーパーバブル」と呼ばれる)が、今回のように孤立した星に見られるのは稀なケースだ。
またN44Fでは、空洞の内側の壁面に、指のような形をした柱構造がいくつか存在している。この柱構造は、冷たいガスやちりからなり、4〜8光年の長さだという。このような柱構造は中心星からの紫外線放射によって作られたもので、わし星雲などにも見られる。