超新星爆発の光が重元素を生成した証拠を発見
【2004年10月14日 国立天文台 アストロ・トピックス(56)】
超新星爆発の光が重元素を生成したことを示す法則を日本原子力研究所 光量子科学研究センター 早川岳人(はやかわたけひと)副主任研究員が発見しました。この法則を理論計算によって、大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 国立天文台 理論研究部の梶野敏貴(かじのとしたか)助教授ら国立天文台と東京大学の理論グループが検証しました。
生命の維持には、軽い水素だけでなく、鉄、ヨウ素などの重元素も必要です。これらの重元素の起源は、太陽系誕生以前に存在した恒星の中で生成されたとの説が、1983年に星の進化の物理的過程の研究でノーベル物理学賞を受賞したW. A. ファウラー(William Alfred Fowler)によって約50年前に提唱されていました。現在では、鉄より重い重元素の約99%は、s核、r核と呼ばれる、恒星の中での中性子の捕獲反応で生成されたことが判明しています。しかし、残りのp核と呼ばれる重元素の起源は謎でした。中性子星のX線バーストや高エネルギー宇宙線、または超新星爆発による生成等の仮説が提唱されていました。
研究グループは、光と原子核の反応の研究の一環として、重元素の合成過程の研究を行っています。その中で、核図表(原子核を陽子数と中性子から分類し、同位体比などを記載した図表)において、太陽系に存在する元素の特定2種類の同位体(p核と、p核より中性子が2個多いs核)の比が、広い領域にわたって一定であるという法則を発見しました。この法則は、高いエネルギーの光がs核に入射し、中性子が放出されることで、p核が生成されたことを意味します。このような天体環境としては、超新星爆発が有力です。そこで、最新の天体観測に基づく超新星爆発モデルを用いて計算を行ったところ、予測される同位体の割合がこの法則を満たすことが判明しました。
この法則は、生命の誕生につながる重元素が、どのような天体で誕生し、どのように我々の太陽系の到着したかという問題の解明にとって重要な鍵となります。また、すばる望遠鏡による原始銀河や初期世代星の天文観測によって、この法則がより詳細に検証されるものと期待されます。
なお、この研究は10月15日付け、アメリカの物理学誌フィジカル・レビュー・レターズ誌に掲載されます。