超新星爆発で誕生する重元素の空間分布

【1999年12月21日 Chandra X-ray Observatory Center

HST image

チャンドラX線宇宙望遠鏡が捉えた超新星残骸カシオペヤ座Aの観測データが解析され、重元素の空間分布が明らかになった。ケイ素やイオウなどの元素に比べて、鉄などの比較的重い元素は超新星残骸の外延部に分布しており、超新星爆発の中心付近で形成されたこれらの重い元素がより速いスピードで外部に放出されているようすが明らかになった。

(左図)チャンドラX線宇宙望遠鏡によるカシオペヤ座A。ファーストライト画像の一枚として、1999年8月19日に撮像されたもので、その後画像の処理と解析が成された。

私たちの身体を含む宇宙の中のすべての物質を構成する元素は、水素やヘリウムといった軽い元素を除いて、すべて星の中で誕生した。これは人類にとって、20世紀の天文学が明らかにした重大な知見のうちの一つであろう。恒星は水素やヘリウムといった軽元素を核融合反応によって重元素に変換し、その際に放出されるエネルギーによって輝いている。恒星は重元素の製造工場のようなものである。

そして重い恒星がその一生の最期に超新星爆発を起こすことによって、通常の恒星内部で起こる核融合反応ではつくることのできない重元素が合成され、宇宙空間に放出される。チャンドラX線宇宙望遠鏡は超新星残骸であるカシオペヤ座Aの詳細なX線画像を得ることに成功し、解析チームはその画像の中に見えるたくさんのガス塊の化学組成を調べた。

解析チームが注目したのは比較的軽い元素であるケイ素をたくさん含むガス塊と、重い元素である鉄をたくさん含むガス塊である。ケイ素に富んだガス塊は比較的小さく明るいものが多く、温度が約3億度の超新星内部で形成されたものであるとみられる。一方、鉄に富んだガス塊は暗いものが多く、これらの元素は超新星爆発の中心部で温度が4〜5億度程度の場所で創られたものである。そして両者の空間分布をみると、鉄に富んだガス塊は超新星残骸の外延部に多く分布していることが明らかになった。すなわち、星の中心部でつくられたより重い元素の方が、より外部に飛ばされていたのである。

こうした観測により、恒星内部での元素合成に関するさまざまな理論的研究に制限をつけることができる。さらには、どのくらいの量の鉄元素やその他すべての元素が生成され、宇宙空間に放出されているのかを知ることは重要である。私たちの太陽や地球もこうしたガスの中から誕生したからである。

<ニュースソース>
Chandra Maps Vital Elements From Supernova(英文)
Chandra X-ray Observatory Center Press Room(英文)

<チャンドラX線宇宙望遠鏡ニュース>
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チャンドラの初仕事、「カシオペヤ座A」の観測
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