国立天文台のALMA(アルマ)計画の近況
【2004年11月26日 国立天文台 アストロ・トピックス(66)】
11月22日、チリ・サンチャゴでのアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会合へ出席した小泉総理大臣は、引き続きチリを公式訪問し、ラゴス大統領と首脳会談を行いました。その中でALMA計画に関する話題もとりあげられました。
文部科学省からALMA計画の推進に関して来年度分として30億3900万円が要求されました。これにはALMAの開発を行うための高度環境試験棟の第二期工事分も含まれています。これに対して今年も例年と同様に総合科学技術会議による評価が行われ、ALMA計画の評価はS-A-B-CのうちのAランク(重要な施策等であり、着実に実施すべきもの)として位置づけられています。
日本のプロジェクト推進体制が整備されつつあり、開発も着々と進められています。アンテナに関しては調達の準備が進められており、受信機については、ミリ波帯ではその心臓部ともいえるミキサ部分についてほぼ仕様を満足する結果が得られ、サブミリ波帯でも評価用受信機が完成し各種の測定が進められています。相関器については9月30日に3年間の製造契約が締結され、国内のメーカにおいて製造が開始されています。
国際的にも大きな動きがありました。9月14日にALMA共同建設協定書の署名が完了して日本が正式に参加したことにより、ALMA計画の最高レベルの意思決定機関であるALMA評議会にも日本の代表を送ることができるようになり、11月初旬にはチリの山麓施設においてその会議が開催されました。また、11月1日にはチリのサンチャゴにあるオフィスビルの18階に合同ALMA事務所が開設され、開所式が行われました。まだ内装工事が進められている途中ではありますが、すでにプロジェクトディレクタやプロジェクトマネージャはここに拠点をおいて活動を開始しています。当然のことながら日本からのチームのための部屋も用意されており、部屋の窓からは眼下のサンチャゴのオフィス街の喧騒とともに、遠くアンデスの山並みも望むことができます。
ALMAへの正式参加を機に、ALMAが目指す天文学研究について広くお伝えするために、第5回のALMA公開講演会は例年よりもかなり大きめの会場とし、下記のように12月5日に都心で開催することにしました(アストロアーツ注:イベントピックアップのページをご参照ください)。まだ席には余裕がありますので、お誘い併せのうえ参加登録をお願いします。また、この講演会に合わせて12月初旬に日本評論社から「私たちは暗黒宇宙から生まれた 〜 宇宙137億年を解き明かすALMAプロジェクト」が刊行されます。この書籍は会場で特別価格にて販売されます。宇宙誕生から生命誕生に至るテーマを日本を代表する執筆者陣が分担して概観したほか、小柴昌俊先生による特別寄稿も含まれていますのでご期待ください。