ビッグバンからわずか10億年後に存在した、大質量ブラックホールの決定的証拠
【2004年12月7日 CHANDRA Press Room】
NASAのチャンドラX線観測衛星によって、ビッグバンからわずか10億年という宇宙初期(われわれから127億光年の距離)に形成された遠方クエーサーの中心に大質量ブラックホールの存在を示す決定的な証拠が捉えられた。中心のブラックホールは充分に成長しており、その質量は太陽の10億倍と考えられている。
SDSSp J1306という符号がつけられたクエーサーは、われわれから127億光年離れたおとめ座の方向にある。宇宙年齢を137億歳とすると、ビッグバンからたった10億年後の宇宙に存在するクエーサーということになる。観測によれば、このクエーサーのX線スペクトルなどの特徴は近傍のクエーサーのものとほとんど違いがないことがわかった。可視光観測からは、クエーサーの中心に太陽の10億倍という大質量ブラックホールが存在していると推測される。
観測から得られたデータから、大質量ブラックホールが放つX線の特徴は初期宇宙でも本質的には変わりがないことが示された。若い(遠方クエーサー中に存在する)大質量ブラックホールと年老いた(近傍のクエーサーや銀河に存在する)大質量ブラックホールのX線スペクトルがきわめてよく似ていることから、大質量ブラックホールや周囲の降着円盤はビッグバンから10億年後にはすでに存在していたと考えられる。
このような初期宇宙の大質量ブラックホールの形成過程については、若い銀河中で起きた大質量星同士の衝突によって太陽質量の100倍ほどのブラックホールが大量に生み出され、続いてそれらが合体しガスが降り積もることによって太陽の10億倍もの質量をもつブラックホールが作られたというシナリオが考えられている。しかし、いつどのようにして大質量ブラックホールが形成されたのかについての答えを得るためには、今後チャンドラX線観測衛星によって予定されている、より古いクエーサーの観測が必要となるだろう。