ひじょうに若い系外惑星候補天体を直接観測
【2005年4月19日 ESO Press Release】
VLT(Very Large Telescope)に搭載された撮影装置NACOによる鮮明な画像によって、若い星の周りに存在する小さな伴星が、惑星候補天体として捉えられた。
この観測に成功した研究チームでは、これまで惑星や質量の小さな天体を、とりわけまだ形成過程にある星のまわりで探し続けてきた。今回惑星候補天体が発見された恒星は、観測天体リストにあったうちの一つ、おおかみ座にある GQ Lupi で、われわれから400から500光年の位置にある星形成領域に存在する。その年齢は、10万から200万歳と若く、まだガズ円盤に取り囲まれているほどだ。惑星候補天体 GQ Lupi B は、この産まれたての恒星 GQ Lupi A から100天文単位(太陽・地球間の100倍)の距離にあるが、これは太陽と冥王星の距離のざっと2.5倍に相当する。
惑星候補天体 GQ Lupi B(惑星であることが確認されれば、GQ Lupi bと呼ばれることになる)の明るさは、GQ Lupi A の250分の1。1999年にハッブル宇宙望遠鏡が、2002年にすばる望遠鏡がこの星を捉えていて、二つの天体は同じ方向へ動いていることが確認された。つまり、GQ Lupi B は GQ Lupi A と同じ距離にあり、偶然重なって見えているわけではないことが示されたのだ。スペクトル観測から、GQ Lupi B の温度は1600度から2500度で、半径は木星の2倍と計算された。しかし、この天体が正真正銘の惑星であるのか、褐色矮星であるかは、微妙なところだ。
残念ながら、あまりに天体の年齢が若すぎるため、現在の理論モデルを当てはめることはできない。あえて当てはめた場合には、その質量は、木星の3から42倍の間となる(惑星と褐色矮星の境界は木星質量の13倍であるとされる)。ひじょうに若い天体のために仕立てられたモデルからは、木星と同等から2倍の質量が示されるが、信頼できる数値を得るにはまだまだモデルの調整が必要なようだ。
本ニュースの内容に関し、東京工業大学(理工学研究科 地球惑星科学)の井田茂氏よりコメントをいただきました。以下は井田氏のコメントを要約した内容です。
この観測は、ある天体からの光を中心星から空間的に分離してとらえるという、本来の意味での「直接観測」である。しかし、現在のところ、この天体は「惑星候補天体」なのである。この天体が形成されて100万年程度またはそれ以下しかたっていないため、自身の収縮によるエネルギーで、どれくらい輝くかの見積もりが非常に難しく、明るさから天体の質量を見積もるところに非常に大きな不定性が生じる。このため現時点では「系外惑星の直接観測成功」と言うことはできない。しかし、今後の詳細な観測により、天体質量の見積もりが木星の10倍以下ということになれば、この天体が「惑星」である可能性が高くなり、この観測が「初の系外惑星の直接観測」になる可能性はある。 今後の詳細な観測を待ちたい。
以上の井田氏によるコメントおよび同氏によるコメントの原文とをあわせて当ニュースをご覧ください。