惑星科学の新時代到来、系外惑星の直接観測に成功
【2005年3月28日 JPL News Release】 4月7日更新
(4月7日更新分)
本ニュースの内容に関し、東京工業大学(理工学研究科 地球惑星科学)の井田茂氏よりコメントをいただきました。以下は井田氏のコメントを要約した内容です。
この観測は、惑星からの光を恒星から空間的に分離してとらえるという本来の意味での「直接観測」ではない。スピッツァー宇宙望遠鏡の観測は、惑星が裏に隠されたときとそれ以外のときの赤外放射の差をとるというもので、トランジット(惑星の恒星面通過)を利用して惑星大気の成分を取り出すという、これまでにハッブル宇宙望遠鏡で行われてきた観測と似たような発想の観測である。
また、今回のスピッツァー宇宙望遠鏡の観測は1波長でしか行われていないため、惑星の正確な温度を見積もることはできない。原論文では「もっと別の波長での観測が必要」と書いている。
今回の観測は本来の意味での「直接観測」ではないが、とても重要な観測であり、今後このような観測を続けることによって、惑星大気に関する重要な情報が得られることだろう。
ご指摘いただいたとおり、本ニュースでは、文字通りの「直接的な観測」が行われたかのような表現となっておりました。
なお、以下のニュース本文は3月28日の公開時のものそのままとしてありますが、以上の井田氏によるコメントおよび同氏によるコメントの原文を踏まえてお読みください。
NASAのスピッツァー宇宙望遠鏡が初めて、2つの系外惑星の直接観測に成功した。観測結果からは、数百光年離れた惑星の温度や大気、軌道についての情報まで得られている。惑星科学の新たな時代の到来だ。
スピッツァー宇宙望遠鏡の目が向けられたのは、以前から存在が知られていた2つの木星型惑星(ペガスス座のHD 209458b、こと座のTrES-1)だ。これらの惑星は親星に近い距離を公転しているため、星の光を吸収し赤外線で輝いているが、その赤外線の光が捉えられたのである。
系外惑星が初めて発見されてから約10年、その存在自体は確認されていたものの、従来の系外惑星の観測方法は間接的なものにとどまっていた。たとえば、惑星が恒星の前を横切る際に恒星のみかけ上の明るさが変化する現象を観測して惑星の存在を確かめるトランジット(恒星面通過)法や、惑星が恒星に及ぼす重力の影響で星の運動がふらつくようすを観測して確かめる方法などである。
スピッツァー宇宙望遠鏡による赤外線観測で得られたデータからは、2つの星の温度が少なくとも1000K(摂氏727度)であることがわかり、「ホット・ジュピター(熱い木星型惑星)」と呼ばれる系外惑星が本当に熱いこと確認された。今後の同望遠鏡の観測によって、惑星の風や大気の組成も明らかになることが期待されている。