超強磁場中性子星の巨大フレア: 日本観測陣の貢献

【2005年4月28日 東京大学理学部プレスリリース

観測史上最大規模の強度のガンマ線を放射した巨大フレアに関する3つの論文に、日本の研究グループが大きな貢献を果たした。2004年末に起きたこの巨大フレアは、いて座の方向にある軟ガンマ線リピーター SGR 1806-20と呼ばれる天体で発生し、瞬間的に放出されたエネルギーは天の川銀河のすべての星の光を合わせた数百倍に匹敵するという驚異的な値であったと推定されている。

日本の参加するSwift(スウィフト)衛星観測チームでは、コンピューターシミュレーションでガンマ線の強度やスペクトルを描き出すことに成功し、野辺山の電波望遠鏡はフレアに伴う電波の画像を撮影した。また、日米共同の地球磁気圏探査衛星Geotail(ジオテイル)では、粒子検出器から巨大フレアの精密なパルス波形が得られており、日本人が揃って重要な観測や分析を行った。


(Swift衛星の写真)

Swift衛星の写真。赤い矢印がガンマ線の到来方向。クリックで拡大(提供:宇宙科学研究開発機構 プレスリリースページ「Swift衛星によるマグネターSGR 1806-20からの巨大なガンマ線フレア」より)

<日本のSwiftチームが、コンピューターシミュレーションで大きな役割>

Swift衛星は宇宙最大の爆発現象「ガンマ線バースト」の正体を探るために、NASAを中心として国際共同で開発された衛星だ。今回の論文に大きな役割を果たしたのは、日本のSwiftチームが中心になって開発してきたコンピューターシミュレーションだ。これは、今までの同チームのX線天文衛星開発の経験が生かされたもので、人工衛星全体をコンピューターの中に再現し、ガンマ線が引き起こす作用をすべて計算し、逆にSGR1806-20からのガンマ線強度やスペクトルを描き出すことに成功した。またその特徴は、数億度という高温の物質からの放射と一致することが確認された。


<巨大フレアの「火の玉」を野辺山の電波望遠鏡が検出>

一方、国立天文台、東工大、上海天文台などのグループは、カリフォルニア工科大学などのグループと協力してこの天体の電波画像を撮影することに成功した。国立天文台野辺山宇宙電波観測所のミリ波干渉計によってガンマ線源の方向を観測した結果、爆発の一週間後(2005年1月4日)に得られた画像に、ガンマ線源と同じ場所に明るい電波源が写っていた。この電波は、強烈なガンマ線とともに放出された巨大なエネルギーを含む火の玉(プラズマ)からのシンクロトロン放射と考えられている。


(地球磁気圏探査衛星 Geotailの写真)

地球磁気圏探査衛星Geotailの写真。(提供:寺沢敏夫 - the giant flare of SGR 1806-20 フレア開始後の0.6秒間 (Geotail衛星によるガンマ線観測)の概要「超強磁場中性子星の巨大フレアの: Geotail衛星観測」より)

<巨大フレアのパルス波形を精密に決定することに成功>

大規模フレアによって、ほとんど全てのガンマ線専用検出器が飽和状態となったなかで、日米共同の地球磁気圏探査衛星 Geotailの粒子検出器(LEP)の粒子カウンターは、飽和を免れた上、比較的高い時間分解能を発揮し、巨大フレアのパルス波形を精密に決定することに成功した。正確な波形は、この線源で何か起きていたのかを物理的に決定するために本質的に重要なものなのだ。また、得られたパルス波形の曲線は、SGR1806-20のフレア固有の時間変化であることが証明されており、このような時間変化を起こすフレアとは一体どんなものなのか、今後の理論的解明も待たれている。

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