すばる望遠鏡が土星の新衛星12個を発見、カッシーニも新衛星を発見
【2005年5月17日 University of Hawaii (1) / NASA Mission News (2)】
すばる望遠鏡などを使った観測により、土星の新しい衛星が12個発見された。発見された衛星は、推定直径がわずか3〜7kmと非常に小さく、11個は土星の自転と反対向きに回っている逆行衛星であることもわかった。また、土星探査機カッシーニも環の中にある新衛星を1個発見しており、これで、土星の衛星の数は47個となった。
(1)土星の新衛星12個
今回の土星の新衛星の発見は、惑星の衛星観測を目的とした、ハワイ・マウナケア山頂にある世界最大級の望遠鏡を使った長期プログラムの成果の一部だ。まず昨年12月、すばる望遠鏡に搭載された主焦点カメラ(Suprime-Cam)によって衛星が発見され、今年の1月〜3月にかけて、すばる望遠鏡、ジェミニ北望遠鏡、ケック望遠鏡により追跡観測が行われ、新衛星の発表に至った。
12個のうち11個が土星の自転と反対向きに回っている。これは、衛星が土星の近くで誕生したのではなく、引き寄せられて取り込まれたことを物語っている。また、表面の反射能を4%と仮定すると直径は3〜7kmと推定される。
今回の発見により、逆行衛星や奇妙な軌道を持つ不規則衛星の起源への理解が深まることはまちがいないと考えられている。驚くべきことに、4つの巨大惑星(木星、土星、天王星、海王星)は、質量や位置などが異なるにもかかわらず、一定以上の大きさの不規則衛星の数がほぼ等しいのだ。この事実を説明できるような、惑星が不規則衛星を取り込むモデルはまだ存在しない。このため、今後の不規則衛星の研究によって、初期の太陽系についての情報がもたらされることが期待されている。
なお、このリリース元では衛星の動画も公開されている。
(2)カッシーニの捉えた新衛星 S/2005 S1
土星探査機カッシーニによって捉えられた47個目の新衛星S/2005 S1の画像が公開された。画像には、衛星はもちろん、その衛星の周辺で環が波だっている様子も捉えられている。土星探査機カッシーニがこの衛星を捉えたのは、今年5月1日。その後の更なる接近で、この衛星のサイズと明るさの計測が可能となり、直径は、約7キロであることもわかっている。
画像に写っている新衛星は、土星のA環にある「キーラーの間隙」の中央に位置している。以前から、この位置に衛星が存在することは予想されていた。それは、波のような模様が間隙の端に見られ、これが、エンケの間隙の中に軌道を持つ衛星パンの重力によって引き起こされている模様と似ていたからだ。S/2005 S1より内側にあるパンの直径は25キロで、間隙の波のサイズから質量が割り出されている。S/2005 S1は土星の主な環の中にある衛星としては二つめだが、同じように質量が計算できると期待されている。
このように、衛星の重力が土星の環に引き起こす波の様子から、その質量や、環と衛星がどのように互いに影響しあっているのかについて情報が得られる。これを応用すれば、原始太陽を取り囲んでいた星雲から、どのようにして太陽系の惑星が形成されたか知ることもできると期待されている。
新衛星の観測は、今後数ヶ月のうちに再び行われるかもしれない。他の環にも、衛星が存在すると考えられており、カッシーニによる、美しくミステリアスな環の世界の探査は、まだまだ続く。