宇宙膨張加速のなぞを解く−暗黒エネルギーか、新たな理論か?

【2005年5月24日 Canadian Astronomical Society News Releases

宇宙膨張の加速を理解する新たな方法が、プリンストン大学のグループによって発表された。この方法によれば、膨張の加速を説明するために必要なのは未知の「暗黒エネルギー」の存在を想定することなのか、新しい重力理論なのかが明らかになるという。

宇宙膨張の加速のなぞは、宇宙物理においてはもちろん、物理学全般にとっての興味深い課題の一つとなっている。過去8年間のさまざまな観測でも、われわれの宇宙は加速の時期に入っていることを証明するデータが得られている。

宇宙膨張の加速を説明するために、宇宙論の研究者は「暗黒エネルギー」と名付けられた、宇宙全体のエネルギーの3分の2を占め、重力による引力よりも斥力を生じるようなエネルギーを仮定した。暗黒エネルギーの候補としては、アインシュタインが一般相対性理論で導入した宇宙項が挙げられる。当初宇宙の大きさが不変であると信じていた彼は、その状況が成立するように宇宙項を付け加えたのだが、宇宙が膨張していることが確かめられた後、撤回せざるを得なかった。しかし今、宇宙膨張の加速の発見により、別の形で宇宙項に関する議論は復活したのだ。

これに対し、宇宙膨張のスケールにおいて一般相対性理論そのものが成り立たないのであり、新しい重力理論を考えなければいけない可能性もある。その候補として、超ひも理論や4次元以上の空間を扱う理論が存在する。

では、この全く異なる二つの可能性を観測などによって区別できるのだろうか。研究結果を発表したチームは、可能だとしている。加速が暗黒エネルギーによるものであれば、宇宙の膨張と銀河団の成長のペースが同じであり、ずれがあれば、このスケールにおけるアインシュタインの理論の敗北が示されることになるという。

将来的には実験や観測により決着がつくことが示された。そのときわれわれの宇宙に対する理解は大きく深まるだろう。