高解像度に期待、NASA火星偵察周回機「マーズ・リコネサンス・オービター」

【2005年8月29日 JPL Press ReleasesNASA Mission News

NASAによる新しい火星探査計画「マーズ・リコネサンス・オービター」(Mars Reconnaissance Orbiter;MRO)火星偵察周回機は、8月12日の打ち上げ後も順調に行作動している。この周回機は、高解像度のカメラを搭載し火星上空約300kmという低い高度を飛行し、上空から机程度の大きさのものを見分けることができるなど、詳細なデータ収集が期待されている。

(火星上空を周回するマーズ・リコネサンス・オービターの想像図)

火星上空を周回するマーズ・リコネサンス・オービターの想像図。クリックで拡大(提供:NASA/JPL)

8月12日にケープカナベラル空軍基地(フロリダ州)から打ち上げられたマーズ・リコネサンス・オービター(MRO)は、現在打ち上げモードから巡航モードへと設定を変更され、順調に作動している。火星に到着するのは2006年3月の予定で、最初の科学探査は11月から開始される。

今回の探査が目指すのは、火星の大気や地下の地層、氷の分布、存在していれば水などを含めた火星の歴史と新たな発見だ。また、上空から得られるデータは、将来の火星有人探査の着陸地点の決定に役立てられる上、探査機そのものの動きを分析し、上層大気や火星の重力場の構造を調べるために利用される。

周回機に搭載された観測機器は、カメラ3つを含めた計6つ。なかでも、惑星探査史上最大口径を持つ望遠カメラは注目だ。上空から机程度の大きさのものを見分けることができるという。さらに同じ領域が別のカメラによって、その10倍の解像度の画像に変換される。3つ目のカメラは火星の気象に関するデータを収集する。得られたデータは、ソーラーパネルで稼動する過去最大のアンテナを使って送信される。これまでの火星探査機と比較すると1分あたり10倍のデータを送信する能力がある。

残る3つの機器は、水に関する鉱物を認識するための分光器、さらにレーダーとラジオメーターだ。レーダーは火星表面の岩石や氷や水を探査、さらにラジオメーターは大気中のちりや水蒸気、温度をモニターする。マーズ・リコネサンス・オービター(MRO)が周回する火星上空約300kmという低い高度は、過去の周回機と比べると20パーセントも低く、到着後には、われわれが今まで目にすることのなかった火星の一面を見せてくれることが期待されている。