マンモスを絶滅に追いやったのは超新星爆発だった!?
【2005年10月18日 Berkeley Lab News】
4万1千年前の超新星爆発によって、1万3千年前にマンモスが絶滅したかもしれない。このような研究結果をアメリカ・カリフォルニア大学のバークレー研究所などの研究グループが発表した。
北アメリカ大陸のマンモスは、およそ1万3千年前を境に絶滅している。その原因の候補としては、これまでに気候変動、伝染病、人間の狩猟などが挙げられていたが、ひょっとすると「超新星爆発」という一見奇妙な説がこれに加わるかもしれない。研究グループによれば、超新星爆発で吹き飛ばされたちりが、集まってかたまりとなり、太陽系に隕石の雨を降らせ、その一つが北アメリカ大陸を直撃したという。この隕石は密度こそ小さいものの、直径はなんと10キロメートルと見積もられている。
その証拠は、人類の活動の跡や狩られたマンモスも見つかっている、石器時代の遺跡にあった。1万3千年前の北アメリカの遺跡9カ所から、磁性を帯びた小さな金属球が発見されたのだ。球に含まれる金属の種類は、地球上では量が非常に少ないものであると同時に、アポロ計画で月から持ち帰られた岩石の組成ともよく似ていた。これは、太陽系全体に同じような物質が降り注いでいたことを示唆する、と研究グループの一人は語る。
隕石が太陽系の外から来たという根拠は何か。遺跡から発掘された石器に含まれる放射性同位元素、「カリウム40」の割合が、太陽系内での割合に比べはるかに大きかったことである。カリウム40はとりわけ超新星爆発で多く作られ、時間とともに崩壊するので、生まれてから46億年たった太陽系にはあまり残ってないというわけだ。
研究グループは、さらに3万4000年前にも同じ超新星爆発からの「贈り物」があったという。この頃のマンモスの牙のうち3つに、放射性元素を含む金属粒子による小さな穴が見つかったのだ。マンモスの牙は非常に固く、時速1000キロメートルの弾丸でも穴を開けられないほどだという。どうやら金属粒子は、宇宙から秒速10000キロメートルで飛んできたらしい……そして、これほどの高速で移動する物質としては超新星爆発で吹き飛ばされた残骸が知られている。
さらなる決め手として、アイスランド付近の海底堆積物中の放射性同位体「炭素14」の測定結果が示されている。炭素14の割合は4万1千年前に150%、3万4千年前に175%、1万3千年前には40%、現在を上回っていた。これほどの増加は、超新星による宇宙線の影響がなければありえないという。
西暦1006年に超新星爆発が観測されているが、木の年輪から、その後炭素14がどれだけ増えたかが調べられている。この関係にあてはめれば、炭素14の割合が150%増えた4万1千年前の超新星爆発は、地球から250光年離れた場所で起きたと見られる。爆発で放出されたちりが250光年移動するのにかかる時間は7000年と見積もられており、ちょうど3万4千年前の炭素14の増加やマンモスの牙の傷と一致する。1万3千年前の炭素14の増加も、遅れてやってきた超新星残骸のかたまりによるものと説明できるという。
マンモスがなぜ絶滅したのか、決定的な説はないし、「超新星爆発の影響」という説明も、複数の「状況証拠」のみで、非常に有力とは言い難い。しかし、もし本当だとしたら、さすがの大きなマンモスも、超新星爆発のワンツーパンチの前にはたまらずノックアウトされたというわけだ。