VLT最新画像:銀河の形は物語る
【2006年7月28日 ESO Press Releases】
ヨーロッパ南天天文台(ESO)のVLTが撮影した、珍しい姿をした銀河の画像が公開された。そこからは、銀河の過去に何があったのか、現在どんな状態にあるか、そしてどのような運命が待ちかまえているかを読み取ることができる。
「犯人」は行方不明
最初の銀河は、くじら座の方向6500万光年離れた位置にあるNGC 908だ。ほぼ典型的な渦巻銀河の形をしている…のだが、左側の腕がまるではがされたかのように変形してしまっている。過去に別の銀河が近くを通ってNGC 908の腕を重力で引っ張っていったようだ。しかし、付近には特に銀河が見あたらない。どうやらちょっかいを出した後、そのまま遠くへ逃げてしまったらしい。
NGC 908は、「スターバースト銀河」でもある。はがれかけている腕も、そうでない腕も、内部に無数の若い星が存在している。爆発的なペースで質量の大きな星が生まれているが、その分、星の死の場面も多く見られる。この10年だけでNGC 908の中で2個の超新星が発見されているのだ(1994年、および2006年5月)。
美しさはいつまで保てるか
ケンタウルス座の方向1億5500万光年の距離にあるESO 269-G57はあまり目立たないため、1970年にESOがこのあたりのサーベイを行うまで文字通り無名の存在だった。その美しい姿を、現在ESOが誇る最高性能の望遠鏡VLTがとらえた。
明るい中心核を、二重にリングが囲んでいるように見える。よく見てみると、内側のリングは何本もの腕がきつくまとまったものであり、外側のリングは2本の長い腕が伸びたものだ。腕の中にはいたるところに星形成領域があり、美しく輝いている。現在、ESO 269-G57の整った形を崩す邪魔者はいないようだが、将来のことはわからない。この方向には数多くの銀河が所属する有名な銀河団があり、ESO 269-G57もその構成員だからだ。背後には遠くの銀河が小さく見えているが、もっと大きく写っているものがあったとしたら、ESO 269-G57はまったく違う姿をしていたことだろう。
破滅へ一直線
NGC 1427Aはろ座の方向に6000万光年離れた場所で、秒速600キロメートルという高速で移動している。そのためNGC 1427Aは矢じりのような形をしていて、通り道に漂うガスとの衝突の結果、いたるところで星が生まれている。
観測の結果、NGC 1427Aには100億歳にもなる球状星団らしき天体が38個見つかっている。そして同じ観測から、NGC 1427Aの長い生涯もやがて無残に終わることがわかった。進む先には、ろ座銀河団の中心天体であるNGC 1399が待ちかまえているのだ。このまま突き進めば、NGC 1427Aはずたずたに引き裂かれ、ガスや恒星を銀河間空間にまき散らすことになるだろう。
NGC 1427Aのすぐ隣には、形の整った銀河が見える。実際にはわれわれから見てNGC 1427Aの25倍も離れた位置にあり、すました顔で一部始終を傍観しているかのようだ。