一番暗い星の記録更新

【2006年8月8日 NOAO News

われわれが正確に測定できる中で一番暗い太陽系外天体は、太陽の6600万分の1ほどの明るさしかない。この天体はDEN 0255-477と呼ばれ、セロ・トロロ汎米天文台の観測によれば、われわれから16.2光年離れた位置にある褐色矮星だ。


ご近所さんのことはよくわかっているようで、案外見えてないものだ。太陽の近くにありながら、見過ごされている恒星や褐色矮星がないか、探している観測チームがある。その方法とは、距離がわかってない星に対して、チリにあるセロ・トロロ汎米天文台の観測から年周視差(解説参照)を割り出すというものだ。

DEN 0255-4700は以前から「興味深い天体」として論文で指摘されていたが、距離は不明のままだった。そこで、観測チームは3年間にわたりDEN 0255-4700を撮影し続け、正確な年周視差を求めた。その結果、太陽からの距離は16.2光年(4.97パーセク)と判明。これは現在知られている星の中で太陽に48番目に近いものということになる。

ただし、DEN 0255-4700は恒星ではない。質量が小さすぎて水素をヘリウムに変換する核融合を起こせなかった、褐色矮星だ。表面の絶対温度は1700ケルビンで、スペクトル型でいえば極端に赤い天体、「L型」に分類される。光を詳しく分析した結果、DEN 0255-4700の表面にはカリウム、ルビジウム、セシウム、そして超高温の水といった珍しい物質が存在することが明らかにされている。ちなみにL型の星に限れば、DEN 0255-4700は太陽に一番近い。

グループはさらに、チリにあるヨーロッパ南天天文台の3.6メートル望遠鏡を使ってDEN 0255-4700の正確な明るさ(見かけの等級)を求めた。距離と見かけの明るさから計算される絶対等級は24.4等となる。われわれの太陽の絶対等級は4.85等なのだから、20等級近い差がある。つまり、DEN 0255-4700は太陽のおよそ6600万分の1という実に暗い天体なのだ。暗さに関しては、DEN 0255-4700はもっとも暗い太陽系外天体の記録を塗り替えることとなった。

「太陽の近くの星」というと太陽と同じように輝く恒星ばかりを思い浮かべるが、DEN 0255-4700のように恒星になりきれなかった天体が、まだまだたくさん潜んでいるようだ。

年周視差と距離の測定

地球から恒星までの距離を求めるには、三角測量の原理を使う。離れた2点から星を観測して星の位置のずれを角度として求めれば距離がわかるということだ。例えば春分の日にある星がどの方向に見えるか角度を観測。それから半年たった秋分の日に、同じ星が今度はどの方向に見えるかを観測する。角度さえわかれば直角三角形の辺の比を使うことで、地球から星までの距離が地球と太陽の距離の何倍かを計算することができる。このようにして地球の公転運動に伴ってできる星の位置のずれを「年周視差」と呼んでいる。(「150のQ&Aで解き明かす 宇宙のなぞ研究室」Q.115 恒星までの距離はどうやって測る? より一部抜粋 [実際の紙面をご覧になれます])