巨大な地球型惑星、太陽近辺に多数存在か
【2006年6月19日 Carnegie Institution】
太陽近辺の恒星のほとんどは、質量がひじょうに小さい。近いということは系外惑星探しの格好のターゲットだが、こうした恒星には、木星よりも地球に近いサイズの惑星が数多く潜んでいる可能性が理論的に示された。鍵を握るのは、逆に、質量がもっとも大きいタイプの恒星だ。
発見数が200に達しようとしている系外惑星の中でも、特に注目されているタイプの1つが「巨大地球型惑星(Super-Earths)」だ。木星(質量は地球の318倍)の数倍という質量が当たり前になっている系外惑星の中にあって、巨大地球型惑星の質量は地球と海王星(質量は地球の17倍)の中間であり、もっとも小さいものは地球の5.5倍しかない。組成は分からないが、岩石がかなりの割合を占めていると考えられている。巨大地球型惑星をどんどん探せば、いつか本当の地球型惑星に行き当たるに違いない。
それでは、どこを探せばよいのだろう。もっとも簡単なのは、太陽に近い恒星を探すことだ。太陽近傍の恒星300個のうち、少なくとも230個は赤色矮星、すなわち質量が太陽の半分以下という小さな星である。こうした星にどんな惑星系があるか予想するのは重要で、そのためには赤色矮星でどうやって惑星が形成されるか考えなければならない。
赤色矮星のような小さな恒星を回る惑星は、マイクロレンズ効果(解説参照)によって相次いで発見されている。1つの例では、赤色矮星が遠くにある別の恒星の光をマイクロレンズ効果で増幅したとき、「第二の増光」が見つかった。これは、地球の5.5倍の質量を持つ惑星が、太陽系で言えば小惑星帯の位置を回っている証拠である。他にも、地球の13倍という巨大地球型惑星も、別の赤色矮星に見つかった。
一方、木星より大きい惑星も赤色矮星の周りに存在することが、マイクロレンズ効果で確認されている。しかし、質量が大きい方が圧倒的に見つかりやすいはずなのに、発見例は巨大地球型惑星と同じ、2つだ。ということは、赤色矮星に形成される惑星は、木星や木星以上のサイズのガス惑星よりも、岩石が相当量を占める巨大地球型惑星の方が多いと予想される。なぜだろう?
太陽系の岩石惑星のように、ちりが集まって微惑星になり、微惑星が集まり惑星になり、…というプロセスをたどったとは考えられない。なぜならば、この過程には時間がかかるため、ガスはその間に恒星の弱すぎる重力を振り切って逃げてしまうからだ。このプロセスでは、ガス惑星を持つ赤色矮星が存在することを説明できないのである。これに対しアメリカの研究グループは、原始星を取り巻く円盤が不安定状態になり、渦状に物質が集まってやがて巨大がガス惑星になるメカニズムを示した。岩石惑星ができてからガスを集めたと考えるのではなく、まずガス惑星ができるところから始まる。
次に、研究グループは原始惑星系の外に着目した。大抵の星が誕生する領域では、恒星としてもっとも重い、O型星も誕生する。巨大で明るく、そして短命なO型星は、強烈な紫外線を発する。この紫外線にさらされたことで、木星サイズの惑星からガスがはがされ、巨大地球型惑星になったというわけだ。近くにO型星がなければ木星型惑星が残るが、こうしたケースは少ない方なので、巨大地球型惑星が存在する赤色矮星の方が多いはずである。
マイクロレンズによる惑星捜索にNASAなどが取り組んでおり、この理論の検証が待たれる。一方、理論が正しければ「巨大地球型惑星」は太陽の近くに数多く存在するが、その組成を調べることも重要な課題だ。生命が存在しうる惑星の発見に向けて、系外惑星研究は着々と進んでいる。
マイクロレンズ効果
宇宙誕生から10万分の1秒後に発生したとされる多数のミニブラックホールや、軽くて暗い褐色矮星が、ちょうど遠方の恒星の前を横切る時、重力レンズ効果によってその恒星が明るく見えると考えられる現象。1993年に最初の候補が発見された。現在も銀河系中心部や大マゼラン雲を対象に、マイクロレンズ効果の検出を目的としたサーベイが実施されている。(「最新デジタル宇宙大百科」より)