3つの惑星と小惑星帯を持つ恒星

【2006年5月23日 ESO Science release

ESO(ヨーロッパ南天天文台)の観測により、天王星や海王星程度のサイズの惑星を3つ持つ惑星系が発見された。この惑星系には、地球に近い軌道を回る惑星があり、小惑星帯の存在が示唆されているなど、われわれの太陽系との共通点も多い。


HD 69830の惑星系想像図

HD 69830を取り巻く惑星系の想像図。二番目と三番目の惑星の間に小惑星帯が描かれている。クリックで拡大(提供:ESO)

太陽から41光年の距離、とも座の方向に、太陽よりわずかに小さいHD 69830と呼ばれる恒星がある。この星の惑星系について調べるために、2年以上にわたり観測を続けたヨーロッパの研究グループがある。

系外惑星を探すために一般的に使われる方法は、惑星が公転しながら中心の恒星をいろいろな方向から重力で引っ張ることで、恒星の見かけの速度(ここでは視線方向の速度)がわずかに変化するのを観測するというものだ。ESOのラ・シーヤ天文台3.6メートル望遠鏡に備え付けられた分光器HARPSも、こうした方法で惑星を見つけるための装置である。

今回発見された惑星がHD 69830の速度に与えた変化は、秒速2〜3メートル(時速にしておよそ9キロメートル)。人間にとっては早歩きの速さだが、天文学的に考えれば実に、実に小さな数字だ。「HARPSでなければこの惑星系は発見できなかったでしょう。間違いなく、世界一精確な惑星探索マシンだと思います」と研究グループの一員、ジュネーブ天文台のMichel Mayor氏(1995年に系外惑星第1号を発見した一人でもある)は自信を持って語った。

3つの惑星の質量は、いずれも地球の10倍から18倍と、14.5倍の天王星や17.2倍の海王星に近い。知られている系外惑星としては小さい部類に入るが、この程度の惑星が1つの恒星の周りを複数個回っているのが発見されたのは初めてのことだという。また、シミュレーションによりそれぞれの惑星の組成が見積もられ、惑星系の歴史についても仮説が示された。それによれば、各惑星は最初は現在より離れた場所で形成され、少しずつHD 69830に近づいたとのことだ。現在は力学的に安定した状態にあるという。

外側の惑星は岩石と氷からなる核を厚いガスが取り巻く構造と見られる。公転距離は地球に近く、液体の水が存在する可能性もある。質量を考えると生命が存在しているとは考えにくいが、年を追うごとに地球により似た系外惑星が発見されていることは確かであり、今後さらに近い惑星が見つかるかもしれないと期待させてくれる。

HD 69830の惑星系にはもう1つ、太陽系に似た要素がある。小惑星帯が存在する証拠が見つかっているのだ(2005年4月26日の記事参照)。その位置は、一番外側の惑星のすぐ内側にあるか、逆にさらに外側にあるのではないかと見られる。

「HD 69830をとりまく惑星系は、惑星形成の謎をひもとくための重要な手がかりとなるでしょう」とMayor氏は言う。「今知られている系外惑星の多様性を理解するためにも、必要な存在となるはずです。」

HD 69830を回る惑星のデータ
惑星名 質量 公転周期
(日)
公転距離
(AU)
推測される構造
HD 69830 b 10.2 8.67 0.07 主に岩石からなる
HD 69830 c 11.8 31.6 0.19 岩石の核とガスの外層
HD 69830 d 18.1 197 0.63 岩石+氷の核とガスの外層

質量は、見積もられる最低値を地球の質量で割った数値。1AU(天文単位)は、地球と太陽の平均距離