恒星でなくても惑星を持つことができる?
【2005年11月8日 JPL News Releases】
惑星は太陽のような恒星の周りを回る。この常識が、くつがえされようとしている。NASAのスピッツァー宇宙望遠鏡が、「褐色矮星(=かっしょくわいせい:解説参照)」の周りで、惑星が形成されようとしている様子をとらえたからだ。
恒星と違って、褐色矮星は質量が小さいので、核融合反応がその中心部で起こるほど高圧にならないので、自ら輝くことはない星だ。しかし、星間物質が重力によって集まって生まれるという点では恒星と同じ。その過程で恒星の周りにはガスやちりの円盤ができるが、褐色矮星にも同様に円盤が構成され、赤外線で輝いている。スピッツァー宇宙望遠鏡が観測を行ったのは、100から300万歳と若く、円盤を持つ6個の褐色矮星だ。惑星の形成の証拠が見つかったのは、われわれから520光年離れていて、カメレオン座の方向にあり、質量は木星40倍から70倍程度の星。
観測の結果、6つの褐色矮星のうち5つで、その円盤中でちりが寄せ集まり、結晶を作っていることがわかった。同じような結晶は惑星が形成されつつある恒星や、私たちの太陽系の彗星(太陽系が誕生した頃の物質を残している)で見つかっている。特に、オリビン(またはかんらん石)と呼ばれる鉱物は、惑星の誕生に欠かせない存在と考えられている。結晶はまだ顕微鏡サイズだが、研究者によれば、今まさに互いにくっつきあって成長している最中だという。
また、褐色矮星の円盤がだんだん平らになっていることもわかった。これも、ちりが集まって惑星になろうとしている証拠になる。これまで、褐色矮星のような冷えた天体の周りで、恒星のように惑星が成長できるという確証がなかったが、今回の発見によって将来褐色矮星も系外惑星探しのターゲットになる可能性がでてきた。
褐色矮星は、いわば恒星になろうとして失敗した星だ。惑星作りに成功して「敗者復活」を果たしているのかどうかが注目されている。
褐色矮星について
褐色矮星: 自ら恒星として核融合反応を起こすほど質量をもたない星のこと。太陽質量の10分の1より小さく1000分の1より大きいクラスの天体で、可視光域では光を出していない。(最新デジタル宇宙大百科より)
(木星が現在の10倍の質量をもっていたとすれば)普通の水素の核融合反応は起こせませんが、普通の水素原子に中性子が一つくっついた「重水素」の核融合反応は始まります。重水素は数が少ないので、すぐになくなってしまい、燃え尽きてしまいますが、余熱によりしばらくは赤外線を発し続けます。このような天体は「褐色矮星」と呼ばれています。褐色矮星は恒星とは呼べませんが、惑星にも属さない天体です。(太陽系ビジュアルブック「木星が『太陽になりそこねた』というのはなぜ?」より)