スピッツァー宇宙赤外線望遠鏡が明かした、惑星形成の新シナリオ

【2004年10月26日 JPL News Release

NASAのスピッツァー宇宙赤外線望遠鏡の観測データによって、惑星形成が今まで考えられていた以上に激しい衝突を経て進むことが明らかにされた。

(恒星を取り巻く円盤と惑星の想像図)

恒星を取り巻く円盤と惑星の想像図。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/T. Pyle (SSC-Caltech))

スピッツァー宇宙赤外線望遠鏡が観測したのは、比較的われわれに近く、年齢がばらついており、質量が太陽の2〜3倍ある恒星266個だ。このうち71個に円盤があり、そこにはさまざまな成長段階にある惑星が存在していると思われる。

これまで専門家は、惑星系は数百万年から数千万年程度で形成されるという比較的スムーズな形成シナリオを描いてきた。この従来のシナリオでは、惑星を形成するちりの円盤(原始惑星系円盤)は星の年齢とともに徐々に消滅する。しかし今回の観測では、若い星でもすでに円盤を失っているものや、年老いた星でありながら大きな円盤を持っているものも発見されたのである。

このような多様性は、大量のちりが含まれる原始惑星系円盤が恒星形成から最長で数億年程度は存在できることを示している。そのような大量のちりを生み出す唯一の方法は、山ほどの大きさを持つ微惑星の激しい衝突だと考えられている。地球の月も激しい衝突を繰り返してできあがったのかもしれないのだ。

スピッツァー宇宙赤外線望遠鏡の登場は、原始惑星系円盤の観測対象を数十個から数千個と飛躍的に増加させ、円盤と惑星系進化の研究の新しい扉を開いたと言える。今後も、われわれの地球誕生にも関わるような重要な情報が多くもたらされることだろう。

なお、リリース元では、微惑星衝突のシミュレーションの動画が公開されている。