もはや「生まれたて」とは言えない、2500万歳の原始惑星系円盤
【2005年8月9日 CfA Press Release】
生まれたばかりの星の周りにできるちりの円盤(原始惑星系円盤)は、集まって惑星を形成するため、数百万年で消えてしまう。これは、いくつもの証拠に支えられてきた天文学の常識の一つだ。しかし、何事にも例外がある。2,500万歳という、高齢の円盤が発見されたのだ。これは200歳の人間を見つけるのと同じくらい、予期せぬ発見だという。
この高齢の原始惑星系円盤が観測されたのは、おうし座に位置しわれわれから350光年離れた、赤色矮星の連星であるStephenson 34の周囲だ。NASAのスピッツァー宇宙望遠鏡の観測データによれば、連星から円盤の内縁までの距離は、約1億キロメートルで、円盤の外縁までは少なくとも10億キロメートルと見積もられている。中心の連星の年齢が誕生してから2,500万年であることから、星と同時に生まれたと見られる円盤の年齢も2,500万歳と考えられる。また、円盤の形そのものにも、他の若い星を取り巻く円盤と比べて、長い時間をかけて発達したような特徴が見られるという。
では、年老いた円盤は今後どんな運命をたどるのだろうか?実は、今回の発見を共同で報告した二人の科学者の間でも意見が割れている。
これまでに観測されたもっとも高齢の原始惑星系円盤は、1000万歳だ。この年齢までに惑星が形成されないなら、いつまでたってもこの円盤から惑星は生まれないだろうと一人は語る。もう一人は、Stephenson 34の原始惑星系円盤には多量のガスが残っているので、木星のようなガス惑星がこれからできるかもしれないとしている。今後、さらなる高齢の原始惑星系円盤の観測と議論を通じて、なぜ円盤が消えずに残るのかという謎を解明したいという点では、もちろん二人の意見は一致している。
Spitzer(スピッツァー宇宙望遠鏡 / SIRTF): 2003年に打ち上げられた、アメリカの赤外線宇宙望遠鏡。口径85cmの望遠鏡を搭載し、液体ヘリウムによって5.5Kまで冷やされている。地球から遠ざかる太陽周回軌道を回っており、2年半以上の運用を予定している。(「最新デジタル宇宙大百科」より)