超巨大ブラックホールは銀河の星形成をさまたげる
【2006年9月12日 NASA JPL News Release】
大型銀河の中心には超巨大ブラックホールがある。銀河が成長するほどブラックホールも成長するが、逆にブラックホールは大きくなるほど周囲で星が誕生するのを妨げ、銀河の成長にマイナスに作用するかもしれない。NASAの紫外線観測衛星GALEXの観測から明らかにされた。
大量の物質が集まった、巨大な銀河。そこでは大量の星が輝き、次々と新しい星が誕生しているように直感される。しかし、韓国・延世大学のSukyoung K. Yi博士はこう語る。「若い星をたくさん見つけたいのなら、小さめの銀河を探した方がよいでしょう」
Yi博士を中心とした研究チームは、GALEXを使って800個以上の楕円銀河を観測した。その結果、巨大な銀河ほど、若い星の数が少ないことがわかったのだ。一般に巨大な銀河ほど、中心には巨大なブラックホール(解説参照)を宿していることがわかっている。そのため多くの天文学者は、星の誕生を抑制している犯人は超巨大ブラックホールだと考えている。
では、なぜ星が生まれなくなるのだろう。可能性は2つ挙げられている。
1つは、ブラックホールがジェットを生み出し、星の材料となるガスを銀河の中心部から吹き飛ばしてしまうという説。もう1つは、ブラックホールにガスを引き込むことで加熱するので、収縮して星を形成するには温度が高くなりすぎてしまうという説である。いずれにしても、銀河に比べてブラックホールが一定以上の質量に成長すると、星形成を阻害する効果が強く働くようだ。
クエーサーとして観測されるように、超巨大ブラックホールは莫大な重力エネルギーを解放して銀河の中心核を輝かせていることが多い。しかし、恒星の集まりとしての銀河を考えるとき、超巨大ブラックホールはエネルギーの生産工場というより、星の生産を止めてしまう破壊者としての側面が強いと言えそうだ。
巨大ブラックホール
巨大ブラックホールは銀河の中心にあり、太陽質量の100万倍〜10億倍に達する強大なもので、恒星進化の末に生まれるブラックホールと区別される。これらの巨大ブラックホールの質量は、ほぼ銀河の質量に比例しているため、銀河の進化の過程において重要な役割をしていると考えられている。(「最新デジタル宇宙大百科」より抜粋)