本当のお月見は、10月6日
【2006年9月29日 アストロアーツ】
9月と言えば秋の始まり、そして月見のシーズン。いろいろな月見グッズが登場したり、月に関するイベントも数多く行われていました。お月見といえば、「9月の満月」と思いこんでいませんか。しかし、今年のお月見、すなわち「中秋の名月」は10月6日で、しかも満月ではありません。
「中秋の名月」には月を眺めて、供え物をするなどといった習慣がありますが、そもそも「中秋の名月」とはなんでしょう。昔から、秋こそが月を見るのによい季節とされていましたが、秋である7月〜9月のちょうど真ん中の日が、8月15日です。そのため、8月15日を「中秋の名月」と呼んで、月をめでることにしたのです。
しかし、この説明では疑問がさらに増えてしまいますね。順番に解説していきましょう。
なぜ、秋に月を見るのでしょう。その理由は、月の高さと、天気です。太陽が天球上で通る道は、夏は高く、冬は低いことはご存じでしょう。月の通り道も太陽とほぼ同じなのですが、満月は地球から見て太陽の反対側にありますから、夏は低く、冬は高いのです。そこで、ちょうど見上げるのに適した高さの満月となると、春か秋になります。しかし、「春がすみ」や「秋晴れ」という言葉があるように、天気の良さでは断然秋。そこで、秋が月見のシーズンとなったといわれています。
「秋が7月〜9月」「中秋の名月は8月15日」と言いましたが、これは現在のカレンダーではなくて、いわゆる「旧暦」による日付です。日本で太陽だけを元に暦(こよみ)を決めるようになったのは明治に入ってからで、それまでは月の満ち欠けを中心とした暦が使われていました。
新月の日を一日(ついたち)として、次の新月を迎えるまでを1か月、そして12か月を1年としました。月の満ち欠けと日付は対応しているので、普通は十五日が満月ということになります。しかし、この場合1ヶ月は29日か30日となり、およそ354日で1年が終わってしまいます。あまりに太陽の動き(=実際の季節)とずれるのは不便なので、いくつかの取り決めに基づき、3年に1回くらいの割合で「うるう月」を挿入して、調整していました。
現在、正式に旧暦を発表する機関はないものの、以上の法則から旧暦を計算することは可能です。そうして実際に求めると、ほぼ今の日付から1か月遅れていることがわかります。ですから、秋は「旧暦では」7月〜9月で、「8月15日」と定義されていた中秋の名月は、9月に行われることが多いのです。
しかし、計算はそんなに簡単にはいきません。そう、うるう月があるからです。今年は旧暦7月の後に、旧暦の「うるう7月」が挿入され、旧暦8月は大きく後ろにずれています。おかげで、今年の中秋は10月6日です。
さらにややこしいのが、「十五夜」なのに満月ではないということです。これはどういうことでしょう。
ある日付が「満月の日」と言う場合は、その日のうちに「月が満月、つまり地球から見てちょうど太陽の反対方向を通る瞬間を迎える」ことを意味します。「新月の日」も、「月がちょうど太陽と同じ方向を通る瞬間」を含む日です。さて、「ちょうど新月」から「ちょうど満月」までは、約14.8日です。ちょっと計算してみてください…「ちょうど新月」の瞬間を含む日が「一日」ですから、その時刻が午後11時のように遅い時間だと…そう、「ちょうど満月」の瞬間は「十六日」になってしまいます。
でも、やっぱり「秋の真ん中」は8月15日なので、たとえずれていても十五夜が中秋の名月。9月ではなくても、満月でもなくても、このように立派な根拠があるのですから、しっかりと月を眺めたいものですね。