タイタンにこれまででもっとも高い山脈を発見
【2006年12月14日 NASA Mission News】
土星の衛星タイタンに、これまででもっとも高い山脈がとらえられた。土星探査機カッシーニによる画像には、上空を雲に覆われた、尾根に雪をいただいたような山脈が走っている。
公開された画像は、NASAとヨーロッパ宇宙機関(ESA)の土星探査機カッシーニに搭載された赤外線分光器が、タイタンのフライバイ(接近通過)の際にとらえられたもの。その解像度は高く、タイタンの地表の地形を400メートル程度の大きさまで見分けることができる。10月25日に得られた画像には、山脈以外に砂丘や溶岩の流れた跡のような堆積物がとらえられている。また今回の赤外線データと以前の電波観測データとをあわせることで、タイタンの地形について、その組成や高度に関する新たな情報がもたらされている。
カッシーニの可視光・赤外線分光器のチーム・リーダーを務めるアリゾナ大学のBob Brown博士は「タイタンに見られるこの山脈は150キロメートルほど続くもので、丁度、カリフォルニア州のネバダ山脈を思わせます」と話している。
画像中に明るく見えている白い堆積物は、メタンの雪か有機物と考えられており、尾根にそって尾根の最上部に存在している。山脈は、石のように硬く、凍った物質でできており、その表面には、さまざまな有機物が層をなしていると考えられている。また、この山脈の形成については、プレートとプレートが離れる際にできた割れ目を埋めるように下から物質が上昇し形成されたと考えられている。地球上では、大西洋にみられる中央海嶺と同様の過程を経て形成されたというのだ。
さらに、赤外線画像に見られる扇型の地形は、おそらく火山から物質が流れ出た跡という考え方を支持するものとなっている。また、以前のフライバイで得られた電波データからも明らかになった円形の地形も、どうやら元はこの火山からの物質の流出によって生じ、広がっていったようだ。一方、山脈周辺に見られる雲の発生源は、研究家を悩ませている。これらの雲の正体は、おそらく小さなメタンの滴で、タイタンの大気が山脈に向かって押し出されることで冷やされて形成されたと考えられている。
このようにフライバイの度にタイタンの秘密が少しずつ明かされつつある。もっとも最近のフライバイは12月12日で、この日得られたデータの分析からも、新たな興味深い情報がもたらされることが期待されている。