土星探査機カッシーニ、ミッション後半に突入
【2006年6月30日 JPL Cassini-Huygens Multimedia Images】
NASAとESA(ヨーロッパ宇宙機関)の土星探査機カッシーニは土星到着から2周年を迎えた。探査は4年計画なので、今まさに折り返し点にいる。今後のさらなる活躍に期待しつつ、ミッション前半における成果を振り返ってみよう。
「この2年間は準備運動に過ぎませんよ」
そう語るのはカッシーニプログラム主事のRobert T. Mitchell氏。彼がそこまで言うのは、この2年間で土星最大の衛星・タイタンにカッシーニは15回接近したが、残り2年間で接近する回数は30回以上にも上るからだ。計画当初からもっとも関心を集め、今も一番注目されている天体、それがタイタンだ。それはよく言われるように生命がいるかもしれないからというよりは、生命誕生以前の地球に似ていると考えられるからだ。太陽に近いおかげで地球の環境は変化を遂げたが、タイタンには窒素、メタン、そしていくらかの有機物の世界が文字通り「冷凍保管」されている。
カッシーニの子機・ホイヘンスがタイタンに突入したほか、カッシーニが何度も撮影した画像からは、地球とのさまざまな共通点が見つかった。メタンの海、浸食の跡、河川、干上がった湖の底、火山と見られる地形、そしてどこまでも伸びる砂丘…。この2年間が単なる「準備運動」であるとしたら、カッシーニはよほどの活躍をしなければなるまい。それに、タイタンは数多くの観測対象の1つに過ぎない。
忘れてはならないのは土星の環だ。カッシーニはこれまでになかった解像度で環を撮影し、波模様や濃淡などの複雑な構造が見られるのを発見した。衛星と環が相互作用している証拠も見つかった。衛星の1つ、プロメテウスが環を構成する粒子を奪い取っている様子が見られた一方、エンケラドスは環に物質を供給している可能性がでてきた。何重にもなっている環の中には、未知の衛星があるかもしれない。
タイタン以外の衛星で特徴的だったのは、イアペタスだ。赤道付近には太陽系最大の山・火星のオリンポス山にも匹敵する高さの巨大な山脈が見つかった。また、多くの小型衛星ががれきの寄せ集めのような構造をしていることもわかった。さらに、カッシーニによって新しい衛星も見つかっている。しかしなんといっても、2年間の探査で最大の驚きをもたらしたのはエンケラドスだろう。南極付近からは巨大な間欠泉のように氷の粒が吹き出していて、表面近くに液体の水が存在する証拠だと考える科学者もいる。
ミッションの「後半戦」ではいきなり大きなイベントが待ちかまえている。カッシーニがタイタンまで950キロメートルという、これまででもっとも近い距離まで接近するのだ。このころからタイタンへ接近する頻度も、飛行経路調整のための動作も多くなってくる。さらに、1年近くかけて太陽に対して向けている面を180度近く変えることで、土星の環全体を見渡しやすくなる。これまで以上に土星自体の観測に力を入れるようだ。今後どのような成果がでてくるかはまったく想像もつかないが、これまでの結果を考えれば、カッシーニに関わる科学者たちがその成果を本当に待ち遠しく思っているのも、うなずける。