発見20周年 今なお天文学者を引きつける超新星1987A
【2007年2月23日 Hubble newscenter】
1987年2月23日、超新星「SN 1987A」が発見された。肉眼でも見える明るさの超新星は約400年ぶりで、発見直後はもちろん、現在も重要な天体として観測が続けられている。歴史的な天文現象の20周年を記念して、ハッブル宇宙望遠鏡による最新の画像が公開された。
SN 1987Aが発生したのは、天の川銀河の隣人である大マゼラン雲の中、16万3千光年離れた場所である。それだけ遠くても、数か月間にわたって太陽1億個分の光を放出し続けたため、肉眼でも観察できるほど明るかった。その正体は、太陽の何倍もの質量を持つ巨大な恒星が死を迎えたときの大爆発だ。
超新星が盛んに研究される理由の1つは、爆発の過程で炭素や鉄などのように惑星や生命の形成に欠かせない元素が作られるからだ。しかし、SN 1987Aが現れる前の天文学者が思い描く超新星の姿はおおざっぱなものだった。爆発はきれいな球状に広がっていくと考えられていたし、爆発前に恒星の周囲で何が起きるかはほとんど考慮されていなかった。それを劇的に変えたのが、世界中の望遠鏡によるSN 1987Aの観測だった。
NASAのハッブル宇宙望遠鏡(HST)は、超新星が発見されたときにはまだ稼働していなかった。3年後、宇宙に投入されると同時に、徹底的な観測が行われた。地上の望遠鏡よりもはるかに細かな構造を見分けられるHSTの性能を生かし、SN 1987Aの周りに広がる物質の観測が行われたのだ。
爆発の広がり方は、それまで天文学者が思い描いていたものとかけ離れていた。SN 1987Aとして爆発する2万年以上前から恒星は物質を放出していて、それが1光年もの範囲に広がっていた。そして、超新星爆発で放たれたX線にあぶられて、リング状に輝き続けている。
リングはHSTが観測している間にも姿を変えていった。リングの内側に爆発の衝撃波がぶつかると、そこが高温に加熱され、いっそう明るく輝く。リングは一度に明るくなるのではなく、爆発前の物質の広がりを反映して、1か所また1か所と輝きだした。今は、まるで真珠のネックレスのような姿だ。
リングの内側には超新星爆発の残骸が広がっていて、爆発時に生成された放射性元素によって淡いピンク色に輝いている。爆発の中心では中性子星が誕生しているはずだが、今のところ見つかっていない。
ネックレスのように輝くリングのさらに外側に、2つの淡いリングが見つかっている。今のところその正体は不明だが、衝撃波が内側のリングを通り抜けて外側のリングに到達すると、何らかのヒントが得られるかもしれない。
20年が経過したが、SN 1987Aは今も姿を変え続けている。そのようすを観測する体制は、以前にも増して充実している。宇宙望遠鏡だけで見ても、HSTに加えて赤外線天文衛星スピッツァー、X線天文衛星チャンドラなどがSN 1987Aを観測している。さらに、HST自身も2008年に新しい装置を組み込まれ、より精度の高い観測を行う予定だ。