2007年2月の星だより
【2007年2月1日 アストロアーツ】
マックノート彗星の急増光は驚きでした。大きな天文現象の中にはほとんど予想ができないものが、まだまだ残っているものです。今月はその代表例である「超新星」を中心に、注目の現象や天文学の話題を紹介します。
超新星1987Aから20年
アストロアーツの天文ニュースで頻繁に登場するのが「超新星」です。今回は、超新星についてこれだけは知っておきたい、というポイントを解説しましょう。
超「新」星といっても、新しい恒星が生まれるわけではなくて、むしろ恒星の死と深くかかわる爆発現象です。超新星には大きく分けると「Ia型」と「それ以外」があります。
Ia型超新星は、白色矮星(はくしょくわいせい)の爆発です。白色矮星というのは、太陽のような恒星が燃料を使い切ってしまった後に残るとても小さくて高密度な「燃えかす」ですが、ある程度以上の質量になると不安定になって爆発と共に砕け散ってしまいます。白色矮星のすぐ近くに恒星があってそこからガスが流れ込めば、Ia型超新星になる可能性があります。
これに対して、II型超新星はとても質量が大きい恒星が死ぬときに起きて、爆発とひきかえに中心には中性子星やブラックホールといった不思議な天体が残ります。
ちなみに、「超」新星ではなくて単なる「新星」というと、超新星とは別のメカニズムで少しだけ小規模な爆発を指しますので、お間違えなく。
さて、超新星の爆発はとても明るくて1つの銀河に匹敵するほどですが、1つの銀河の中で100年に1度起きるかどうかという珍しい現象です。私たちの天の川銀河では1604年を最後に観測されていません。そのかわり、宇宙には無数の銀河があるので、遠くの銀河で発生した超新星が連日のように見つかっています。
天の川銀河で発生した超新星はとても明るく、古文書によれば昼間でも見えるほどだったようです。一方、遠くの銀河で起きた超新星はとても暗くて見つけるのが困難です。そうした遠くの超新星を探す観測者は世界中にいますが、日本人の活躍も目立ちます。とりわけ山形県の板垣公一さんは、最近大活躍を見せている超新星ハンターです。
1987年2月23日、天の川銀河の隣にある「大マゼラン雲」という銀河で超新星が発生しました。「超新星(SN)1987A」という呼び名を与えられたこの超新星は(1604年以来初めて)肉眼でも見えて話題になるとともに、超新星の研究を大きく前進させました。今でも超新星について語るときはSN 1987Aを外すことができませんが、出現から20周年となる今月以降、再びクローズアップされることは確実なので、注目してみてください。
- 月刊天文雑誌「星ナビ」 - 3月号の特集はマックノート彗星と超新星
- ニュース(2005/08/24) - 「進む先に過去がある」超新星SN 1987AのX線画像
- ニュース(2006/11/13) - 板垣公一さん、25個の超新星発見を振り返る
- ニュース(2007/01/09) - 板垣さん、超新星2007Cを発見 早くも今年2個目
- ニュース(2007/01/15) - ケプラーが見た超新星は未知のタイプ?
- ニュース(2007/01/29) - 超巨星の最期は爆発の連続
土星の観測シーズン到来
さて、夜空では南の方向で冬の星座が見ごろを迎えていますが、東の空へ目を向けると、しし座のあたりに土星が輝いています。11日は土星が衝、つまり地球から見てちょうど太陽の反対側に位置する日です。この前後では、土星を一晩中見ることができ、さらに日を追うごとに夕方の空で見やすくなってきます。
土星の見どころは、なんといっても環(リング)の存在です。口径が5センチメートル程度の小さな望遠鏡でも見ることができますし、口径20センチメートルほどの大きな望遠鏡になると、環の構造も見えてきます。とくに有名なのが、環を内側と外側にわける空隙(すきま)の1つ、「カッシーニの空隙」です。17世紀から18世紀にフランスで活躍した天文学者カッシーニが発見しました。
現在、土星の周りを同じ名前を持つ探査機「カッシーニ」が回っていて、土星やその衛星を観測して大量の画像やデータを地球に届けています。とくに美しいものや興味深いものはアストロアーツニュースでも取り上げていますので、お見逃しなく。
- 天文現象ガイド - 2月11日 土星が衝
- アストロアーツオンラインショップ - 10分で完成!組立天体望遠鏡:環も見える、手ごろな望遠鏡
「不思議な星」ミラが明るい
明るさが変化する「変光星」は数多く存在しますが、その中でもとくに有名なのがくじら座の「ミラ」でしょう。11か月ほどの周期で明るくなったり暗くなったりするのですが、なんと一番暗いときが10等級なのに対して明るいときには2等級にまでなる驚くべき星です。その名前も、「不思議な星」を意味する「ステラ・ミラ」からつけられました。
ミラの明るさが変化するのは、星そのものの大きさが変化しているからです(ただし、膨らんでいるときの方が温度が下がって暗くなる傾向にあります)。ミラはもともと太陽のような恒星でしたが、核融合に必要な材料をほとんど使い切ってしまい、生涯の最期に近い不安定な状態にあると考えられています。
さて、そのミラが、今月の末に極大(明るさのピーク)を迎えます。実はミラはいつも2等級まで明るくなるわけではなく、3等級ほどにとどまってしまうことが多いのですが、今回はいつもよりも明るくなるのではないか、という専門家の予想もあります。また、ここ数年は極大を迎える時期にミラが太陽に近すぎて見られないことが多かったのですが、今回はひさしぶりに、暗くなった後もじゅうぶんな高度にあるので観察するチャンスです。
ミラの位置は、夕方の7時ごろで南西の方向30度の高さです。1月の時点ですでに肉眼で見えるほど明るくなっているので、周りの星と比べながら、明るさの変化を追うのもおもしろいでしょう。
- 天文現象ガイド - 2月28日 くじら座の長周期変光星ミラが極大光度
- ニュース(2007/01/22) - 肉眼でも見られるようになってきた変光星ミラ
- ニュース(2007/01/25) - 死にゆく恒星が惑星を生もうとしている